コロナ時代のコミュニケーション

▼ プレイン・ランゲージで信頼を獲得する
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情報発信の要となるのは信頼です。
クライシス・コミュニケーションにおいて、
信頼が大切であることはIRを担当される皆様は
特に実感されているのではないでしょうか。
そして信頼が重要なのはビジネス以外での
クライシス・コミュニケーションにおいても同様です。

コロナパンデミックの中、世界中の多くの人たちが
国や地方政府の公式発表に日々注目しています。
このような発表で国民に外出しないことを要請する場合も、
発信者への信頼があるかどうかで、
オーディエンスの反応は大きく変わってきます。

プレイン・ランゲージはクライシス・コミュニケーションや
それ以外の情報発信においても、信頼を確立して、
その信頼を維持して深めていくために大きく役立ちます。
今回のパンデミックにおける情報発信でプレイン・ランゲージの
視点からみて成功しているケースとしては
米ニューヨーク州知事クオモ氏が挙げられます。
(英語リンク:https://m.youtube.com/watch?v=XILgJklmeVE)

▼ クライシス・コミュニケーション成功のカギ
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コミュニケーションを成功させるには、
プレイン・イングリッシュを使って次の7つの原則を守ることが役立ちます。

  1. 真実を伝える
  2. 厳しい現実を曖昧に伝えない。また、実際よりも良く見せようとしない。
  3. 意見と事実を確実に区別する。意見も事実も重要な情報ではありますが、
    この2つを区別して発信することは信頼を得るにあたり重要です。
  4. 人間性を見せる。オーディエンスに難しいことを頼む場合、
    発信者の人間性、ストーリー、弱さを見せることで、
    信頼をもたらすことができます。
  5. 予測できるオーディエンスのリアクション、ポイント、反感、
    抵抗、反対意見を表明する。
  6. シンプルな言葉を使う。今回英語圏で使用されている
    「Stay at home. Stay safe.(家にいる。安全でいる。)」が好例です。
    覚えやすく、影響力も高くなります。
  7. 表などで情報を切り取って表現する場合、その理由を説明する。
    例えば、1日の傾向ではなくて3日の平均を見る場合などは
    その理由を説明する。

プレイン・ランゲージ(平易な言語)とは

以前に比べて日本でもプレイン・イングリッシュについて
注目度が上がってきました。少し前の資料ですが金融審議会
「ディスクロージャーワーキンググループ報告」(2018年6月)
でもわかりやすい開示という点において、
プレイン・イングリッシュの概念が参考として記載されています。

『(略)米国では、SEC(米国証券取引員会)が、平易な言葉で
明確、簡潔に、整然とした構成で記載すべきという
“Plain English”の概念を、一部の非財務情報に適用している。
また、英国では、FRC(英国財務報告評議会)が、適切で容易に
理解可能な情報が投資家に提供されることを目的として、2015年に
“Clear & Concise”を公表し、優れた開示の実例を紹介している。』

そしてプレイン・イングリッシュと同様に注目されている考え方
としてプレイン・ランゲージ(平易な言語)があります。
基本的な考え方はプレイン・イングリッシュと同じですが、
英語に限らず他の言語でも、読者ができるだけ迅速、容易に
そして完全に内容を理解できるように書く手法です。
提供しているサービスや制度が利用しやすいように公的機関は
プレイン・ランゲージを使うように法律で定めている国もあります。
またWHO(世界保健機関)では効率的なコミュニケーションのために、
プレイン・ランゲージの使用を原則としています。

日本でも今後さらに外国人が増えるにあたり平易な日本語への
取組みが進んでいます。
いずれもコミュニケーションの円滑化、生産性の向上を目標としており、
世界的に意識が高まっている取組みといえます。

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◆ 参考・出典一覧
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20180628/01.pdf

財務報告書の進化とプレイン・イングリッシュ

プレイン・イングリッシュは、数年前には想像できなかった速さで
IRの世界に浸透しています。この背景には、投資家が財務報告書に
求めることが変わったことや、規制の変化があります。
数字だけではなく、その背景や計算方法を財務諸表上で
説明することが求められるようになったのです。
説明内容は得てして複雑で、表現する言葉も冗長になりがちです。
そんな内容を読者に伝わるように発信するには、
プレイン・イングリッシュを使って
わかりやすく表現することが必要不可欠です。

ここ数年、日本の会計原則でもキャッシュフロー計算書の
提出が義務付けられ、年金などのより複雑な勘定科目の
掲載も義務付けられるようになりました。
開示が進化し、複雑な事実に対する透明性が
より求められるようになったことで、開示内容に関する
説明やコメントを付け足す必要性も上がってきました。

このような背景の中、企業が数字を開示すれば投資家が
満足していたのは過去となり、今の投資家を満足させるには、
数字の背景となるストーリー、つまり、
開示している結果に至った理由を説明することが
求められるようになりました。

このニーズが生まれた背景には、
企業スキャンダルや、複雑な会計基準、企業が
運営する環境から生まれる外部リスクなどが
原因として考えられます。

さらに、財務指標が過去の状態を表す指標であると
認識されるようになり、投資家は将来を
予測するにあたり必要な、この先の業績を予測することが
できる指標を求めるようになりました。
そのため、非財務指標が活用されるようになってきています。
例えば、顧客満足率が下降傾向にあれば、
今までと同様の売上成長や利益率を維持することは
できなくなることが予測できます。

もし現実に未来の業績が危ぶまれるような状況に陥った場合に
大切になるのがコミュニケーションです。
企業が結果を受け止め、真摯な議論を行い、
その結果を開示することで、投資家が保有株式を
処分する可能性は少なくなります。
投資家の行動は開示される議論の内容によって、
変化するのです。

業績の背景にあるストーリーや理由、
非財務指標に関する議論の内容などを
世界の投資家に向けて発信するために
日本語から英語に翻訳する場合は、翻訳の質が
投資家に与える印象を大きく作用します。
このような状況でプレイン・イングリッシュが
非常に大切になります。