IRの世界でも注目のAI

精度と効率を高めたコミュニケーションが実現する可能性

AI(人工知能)を使ったツールが注目されています。金融業界の大手は既に大規模にAIツールを導入しており、IRの世界でも広く活用されることが期待されています。

AIツールを使うことで、投資家とのコミュニケーションの質を高め、より多くの情報に基づいた意思決定を行い、より効果的なリスク管理ができると考えられています。今回は、AIツールを活用すると、どのようなメリットがあるのかをご紹介します。

自動でのデータ分析と解釈が実現

財務データ、ニュース記事、ソーシャルメディアへの投稿など、企業の株価に影響を与える情報を含む大量のデータの分析と解釈を自動化することができます。市場センチメントや競合他社の動向など、企業の業績に影響を与える要因に関する貴重な洞察を今まで以上の精度と効率で得ることができます。

リアルタイムで投資家センチメントを知る

リアルタイムで市場イベントをモニタリングし対応するのにも役立ちます。ソーシャルメディアの投稿、ニュース記事、その他一般に入手可能なデータをモニタリングし、潜在的投資家のセンチメントを判断できます。たった1つのツイートやニュース記事が即座に企業の株価に影響を与える可能性がある今の時代に特に重要です。

精度の高い投資家ターゲティング

適切なタイミングで適切な投資家を特定し、ターゲティングするために使用できます。また、投資家にとって最も重要なトピックを特定し、それに応じてIRコミュニケーションをパーソナライズすることも可能です。 

投資家との情報共有が簡単に

チャットボットなどのAIを活用したツールで、一般的な質問に回答し、基本的な情報を迅速かつ効率的に提供することができます。機械的でない、パーソナライズされた方法で使用します。また、AIの使用を表明することは、信頼関係を築く上で重要です。

リスク管理の改善

潜在的なリスクを特定し、それを軽減する戦略を策定することで、企業がより効果的にリスクを管理するのにも役立ちます。

課題は信頼とプライバシー

AIツールによって生成された情報が正確で信頼できるものであることを保証することは大きな課題です。また、AIによって提供された情報の責任をだれが持つのかも課題になっていくと考えられます。

また、AIツールの使用による知的財産権の違反やデータやプライバシーに関する課題の可能性も考慮し、注意していく必要があります。

変わる時代に重要な明確なコミュニケーション

大きな可能性を秘めたAIが世界を変える日も遠くないかもしれません。それでも、IRの基本であるシンプルで明確な言葉を使ったコミュニケーションが重要であることは変わることはありません。

メルマガ担当者による2021年の振り返り

コロナがもたらしたIRへの変化

2021年は、ニューノーマルという言葉が現実味を帯びた1年でした。新型コロナウイルスのパンデミックによる変化が一時的なものではなく、今後定着してくことを実感した方が多いのではないでしょうか。

6月号では、特に今後も変化が加速して続いていくと考えられる注目トレンドの下記3点を紹介しました。

-ポートフォリオマネージャーの存在感の増大
-デジタル化のさらなる促進
-ダイバーシティ&インクルージョンの浸透

特にデジタル化の促進については、日々の業務だけではなく、ビジネスのプロセスを根本的に変えていく変化となる可能性を秘めています。

ダイバーシティ&インクルージョンというコンセプトや言葉を日本でも耳にするようになり、関連した方針をホームページに掲載する大企業も増えてきています。今後、この考え方が時間をかけてサプライチェーン全体に及んでいくと考えられます。

ポートフォリオマネージャーの存在感については、米国で起きている変化ですが、海外企業のIR活動に携わる際に目にすることが多くなった変化でしょう。

AIがIR翻訳を変える

2021年の記事を書くにあたって特に印象に残っているのが10月号「AIを活用して投資をする時代へ」です。AIが進化を続け、投資やIRの世界にも大きな影響を与えるようになっています。

IR資料を英語に翻訳することが多い日本企業にとって影響の大きいトレンドです。直訳とプレイン・イングリッシュのどちらを選ぶべきか、そして人間による翻訳と機械翻訳のどちらを使うべきかという議論をする際に、大きな影響をもつ情報です。

自然言語処理(NLP)は、人間の耳が聞き逃したり、誤解してしまうような情報も収集することができるシステムです。コンテンツがどのように表現されているか、つまり言葉遣いや単語数、構文の複雑さなども情報として処理されることが特徴です。

「曖昧さ」や「冗長性」は悪いニュースの象徴?

S&Pグローバルマーケットインテリジェントがとても興味深い調査結果を発表しています。企業の経営チームは、悪いニュースを伝えるときの方が、より複雑な構文でより多くの単語を使うのです。S&P 500社の場合、業績発表でネガティブなニュースを開示するときの方が、1文あたりに使われる単語数や3音節以上の単語数が平均よりも多いことがわかっています。

日本企業がグローバルに活躍するにあたり、直訳は意図しないリスクや悪影響を生んでしまいます。日本語では曖昧な表現が一般的なことから、直訳された英語は文が長く構文が複雑です。これを説得力や透明性に欠ける望ましくない文であるとNLPが判断してしまうのです。

この問題は、直訳をせずプレイン・イングリッシュを活用して翻訳することで解決できます。プレイン・イングリッシュでは、直接的で簡潔な言葉を使い、不要な複雑さや曖昧さは使いません。そのため、NLPが台頭することで、プレイン・イングリッシュが活用される流れが生まれる可能性があります。

プレイン・イングリッシュが活用されるからといって、機械翻訳が役に立たないわけではありません。両方のツールを活用して、意図が伝わる効果的なコミュニケーションを実現させていきましょう。

また、日本語も同様に、今後幅広い投資家を対象とした場合、今まで通りの曖昧な表現が許されるのかという点は議論が必要です。忙しい投資家が情報を速く、誤解なく理解できる工夫を日本語資料に対しても行っていくことが望ましいでしょう。