「最善の利益規則」2020年6月末に施行

▼ 証券販売業者に求められる「平易な言葉でのわかりやすい開示」
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米国では、SECによる新規制である「最善の利益規則(Regulation
Best Interest)」が2020年の6月30日から施行されます。
それに伴い、今まで以上にプレイン・イングリッシュが
注目を集めています。

これまで米国の連邦法では、投資アドバイザーと証券販売業者には
異なる法規制が課されてきました。しかし、近年では、証券販売業者が
証券の推奨を行っており、顧客からみて投資アドバイザーの
投資アドバイスと区別することが難しくなっていることから、
顧客保護のために証券販売業者に対しても同じような法規制を
課すべきではないかという指摘がされていました。
このような背景の中、証券販売業者が個人の顧客に証券等を
推奨する際に、「顧客の最善の利益のために行動しなければいけない」
ことを定めた「最善の利益規則(Regulation Best Interest)」を
柱とする新規則案が生まれたのです。

この規則において果たすべきとされる義務は、開示、注意、
利益相反回避、法令遵守の4種類となります。
今回特に注目したいのが、開示義務です。ここでは、顧客との
関係の範囲と条件に関するすべての重要な事実や当該推奨に伴う
利益相反に関するすべての重要な事実を書面にて完全そして
公正に開示することが求められています。

▼ プレイン・イングリッシュを活用する
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情報の受け手にとっての最善の利益を追求するためには、
平易でわかりやすい表現を使ったコミュニケーションが
必要不可欠になります。そのために、今までに以上に注目を
浴びることが予想されるのがプレイン・イングリッシュです。

今回の新規制以外の分野においても、情報社会である今の
社会にとってスピードは重要な要素です。
プレイン・イングリッシュは、書き手が意図した内容を
明確に伝えることで、迅速に相手に理解を促すことができます。
その結果、書き手、読み手の双方に大きなメリットを生み、
効率的なコミュニケーションを図ることでコスト
効率も高まることが期待されます。

プレイン・イングリッシュの動きは英語に留まらず、
プレイン・ランゲージ(平易な言葉)として世界中に
広がりを見せています。あらゆる分野において今まで以上に
情報の明確かつ公正な開示が求められる中、
プレイン・ランゲージは企業にとって必要不可欠な
ツールとなってきています。

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◆ 参考・出典一覧
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/market_wg/siryou/20191210/02.pdf

コロナパンデミックにおける株主総会に関する各国の対応

▼ 株主総会延期、またはバーチャルかハイブリッドでの開催
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コロナウイルスのパンデミックに伴い、イギリス、アメリカ、
そして大陸ヨーロッパにおいて、株主総会に関連する法の
変更と新しいガイドラインが発動されています。
株のアクティブオーナーシップという考え方を尊重しながらも、
パンデミックの中で「社会全体の健康に対する義務」を
個人や企業が果たしていくことを目指しています。

▼ スイスでは非公開の株主総会
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スイスでは、非公開で株主総会を実施することが
政府から許可されました。それに伴い、エレベーターメーカーの
Schindlerでは、株主が参加しない年次総会を実施しています。
DKSHなど他の企業では株主総会の延期を決定しています。

ガバナンス助言団体EthosのCEO は、株主総会を非公開にすると、
株主が問題に感じている事項について取締役会や
経営陣に直接伝える重要な機会が失われるため、株主が
経営に関与できないとして懸念を示しています。
同時に、株主投票の面においては、ほとんどの投票がプロキシを
通じて投票されているので、ほぼ影響はないと指摘しています。

▼ スペインではバーチャルのみでの総会が可能に
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緊急事態を宣言したスペインでは、3月15日からロックダウンを実施。
国民は必要最低限の外出のみが許可されています。
そのため、バーチャルのみでの株主総会が許可される決定が下されました。
この決定は、コロナが経済に与える影響を緩和させるための
「経済的そして社会的なシールド」を作り出す一連の決定の一部です。
ポイズンピル( 敵対的買収に対する企業の防衛策の一つ)の一種として、
海外の投資家によるスペイン上場企業株式の10%以上の買収を
政府が拒否することができる決定も下されました。
また、スペインの証券監督者は空売りを禁止しました。

▼ オランダでは延期またはハイブリッドでの開催
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オランダではバーチャルのみでの株主総会の開催は許可されておらず、
3社が株主総会の延期を決定しています。他の企業もこの決定に
追随することが予測されます。延期のもうひとつの理由としては、
取締役会が配当提案や自社株買いプログラムを再度検討する必要が
あるという点もあります。ハイブリッド方式で株主総会を
実施する企業もあり、これによりライブ投票は実現しますが、
株主は取締役会に対して質問をすることができません。

▼ イギリスでは株主の参加を最大化するための工夫を推奨
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イギリスでは、Chartered Governance Instituteと
法律事務所Slaughter and MayがCovid-19の影響を受けて
株主総会に関するガイダンスを発表しました。その発表において、
株主の総会への参加機会を最大化する試みが提言されています。
プロキシ投票の推奨、オンラインでの株主の質疑応答、
株主総会のライブストリームなどを検討することが
適切であるとしています。また、個人投資家に対して
取締役会とコミュニケーションを取れる場を年内に
開催するということも提案されています。

▼ 米国ではSECがガイダンスを発表
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米国では、バーチャルまたはハイブリッド型の株主総会を行い、
株主に対して遠隔でアクセス、参加、投票できるように
企業が明確なガイダンスを提示することが推奨されています。
関連する企業向けのガイダンスをSECが発表しています。
株主提案に対しては、今年の株主総会シーズン中に
電話などの方法により機会を提供することが求められています。

詳しくお知りになりたい方は下記をご覧ください。
『CORONAVIRUS: Switzerland allows ‘closed door’ AGMs, as others are postponed or held virtually across Europe』
RESPONSIBLE INVESTOR  2020年3月18日
https://www.responsible-investor.com/articles/coronavirus-switzerland-allows-closed-door-agms-as-others-are-postponed-or-virtually-held-across-europe

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◆ 参考・出典一覧
『CORONAVIRUS: Switzerland allows ‘closed door’ AGMs, as others are postponed or held virtually across Europe』
RESPONSIBLE INVESTOR  2020年3月18日
https://www.responsible-investor.com/articles/coronavirus-switzerland-allows-closed-door-agms-as-others-are-postponed-or-virtually-held-across-europe