IRの未来~変わり続ける環境に順応する~

IROとして15年のキャリアをもつNIRI(全米IR協会)メンバーが
IRの今後について語りました。過去15年の間、IRに求められるスキルは
著しく増えました。また、テクノロジーの進化にともない、IRO自身も
進化を遂げています。

2005年頃、ソーシャルメディアは子供の遊びにすぎないと考えられて
いました。また、多くの人が「持続可能性」は環境問題に直結する
ビジネスの問題だと考えていました。アクティビスト・シェアホルダーは
企業にとって邪魔ものであり、企業はフルカラーの分厚い
アニュアルレポートを作成するなど、IRを取り巻く環境は今とは全く
異なるものでした。
この15年で時代は大きく変わりましたが、一体IRの未来は
どのようなものになるのでしょうか?

▼ 破壊的チャンスの到来
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今後、IRの役割はより重要になり、企業はより多くのリソースを
つぎ込むようになると考えられます。ただし、IRは環境やテクノロジーの
変化に対応できない場合、生き残ることは難しいかもしれません。

IRに求められるスキルは毎年増えています。コミュニケーション、
財務・会計、市場、コーポレートガバナンス、規制対応、持続可能性、
危機管理、AI・データ分析、競合情報分析などは、いまやIROに
求められているスキルのわずか一部です。IROはその増え続ける要求に
応えることができるのでしょうか?もちろん、複数の分野で実力を
発揮するIROも存在するでしょう。しかし、実際には、チームでの
IR活動が行われるようになると予測されます。

▼ チームでの活動が主体に
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IRチームのサイズは大きくなり、その役割もより特化されると
考えられます。従来IRチームは小規模で、1~2人で担当するのが
一般的でした。
しかし、将来的には、複数の分野での経験を有するチームリーダーが
コーチとしての役割を果たし、メンバーがプレイヤーとしてサポートする
チーム形式が主流になると考えられます。

企業はIR部門を強化するためには、財務・会計、市場、コーポレート
ガバナンス、規制対応、持続可能性、危機管理、AI・データ分析、
競合情報分析などの中から、IR部門に必要なスキルを特定する必要が
あります。これらの役割は現在でも企業内に存在していますが、
IR組織の一部とすることで、よりターゲットを絞った戦略を
実現することが可能になるでしょう。

▼ ウェブサイトをチームメンバーとして活用する
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また、IROが活用できるテクノロジーが多く開発されており、新しい
テクノロジーがIRの役割をサポートするようになっていきます。
IRウェブサイトを統合テクノロジープラットフォームとして今まで以上に
活用することも有効です。投資家が企業についてリサーチする際の
第一歩がウェブサイトです。現在、IRウェブサイトの「よくある質問」に
掲載されている質問は、誰も聞かないような質問であることが多々あります。
そのため、ここで質問の答えを得られなかった投資家は企業に連絡をとり、
ミーティングを要求してきます。

オンラインショッピングサイトのようにチャットボットを採用することで、
質問により効率的に対応することが可能です。IRウェブサイトは
投資家がIROとの面談をスケジューリングするためにも活用できます。
特に小さいIRチームは活用することで、IROが戦略的なタスクや
投資家との建設的な対話にエネルギーを注ぐことが可能になります。
IRウェブサイトをチームメンバーの一員として考えることをお勧めします。

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◆ 参考・出典一覧
『The Future of IR: A Team of Tech-Empowered Specialists?』
IR Update 2019年秋号

気候変動に関する開示は部門を越えた協力が必須

▼ TCFDフレームワークの導入を推進
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英国FRC(財務報告評議会)は、企業は気候変動に関連する
報告について、より真剣に取り組む必要があると発表しました。
レポートでは、気候変動に関する情報開示を行う際に求められる点、
さらには、開示の改善に向けて企業が自問するべき内容を提示しています。

また、気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の
フレームワークを使用することを推奨しています。TCFDは2017年に
ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標の4つの分野に関する
フレームワークを発表しています。

このレポートでは、企業がTCFDフレームワークを導入する際に、
自問すべき質問を紹介しています。例えば、指標と目標に関しては
「気候変動による影響を監視および管理するにあたり、
最も必要な情報は何ですか?また、これらの情報をどのように特定し、
どのように戦略やビジネスモデルに結び付けますか?」という質問を
自問することを推奨しています。

▼ 部門を越えたシナリオプラニング
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また、気候変動が自らのビジネスに与える長期的な影響を
理解するにあたり、IRが他部門と協力し、シナリオプラニングを
行うことの重要性が指摘されています。

シナリオプラニングを行うためには、将来に関する徹底した評価、
さまざまな気候シナリオにおける企業のキードライバーを特定する
必要があります。このような分析には、戦略、財務、リスク、
レポーティング、総務、持続可能性、IR、取締役会など、分野や
部門を越えて協力する必要があります。

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◆ 参考・出典一覧
https://www.irmagazine.com/reporting/companies-urged-game-climate-disclosure
『Companies urged to up game on climate disclosure』
IR Magazine(2019年10月23日)

経営者の英語が業績発表の結果に影響 (ハーバードビジネスレビューより)

世界中の経営陣がビジネスの共通語である英語を使って、
投資家コミュニケーションを行う中、英語や文化的背景の
違いが市場に与える影響について調査が行われています。

▼ プレイン・イングリッシュが市場に影響
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経営陣の英語が市場に与える影響について、米国外の企業4,500社を
対象に調査が行われました。

経営陣がどれだけ的確に英語でメッセージを伝えているかについて、
プレイン・イングリッシュの原則に従っているか、そして、文法のミス、
受動態の誤った使用、冠詞の誤った使用の発生頻度を基準として
測定されました。

その結果、プレイン・イングリッシュではない英語や誤った表現が
ある英語が、出来高の減少、不安定なアナリストの予測など
株式市場からの反応に複数の悪影響があることがわかりました。

業績発表を行う際においても経営陣は複雑な表現や曖昧な表現を避け、
明確、簡潔な話し方で対応する必要があると、この調査では
結論づけられています。

詳しくお知りになりたい方は下記をご覧ください。
『Research: Executives’ English Skills Affect the Outcomes of Earnings Calls』
Harvard Business Review(2019年8月1日)
https://hbr.org/2019/08/research-executives-english-skills-affect-the-outcomes-of-earnings-calls

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◆ 参考・出典一覧
『Research: Executives’ English Skills Affect the Outcomes of Earnings Calls』
Harvard Business Review(2019年8月1日)
https://hbr.org/2019/08/research-executives-english-skills-affect-the-outcomes-of-earnings-calls