ESG関連のコミュニケーションをアップグレードする

▼ 株主が求めているのは定量化
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
IRマガジンが主催したESGインテグレーション・フォーラム
ヨーロッパでのインタビューで専門家が次のことを述べました。

・ESG 情報をリリースする企業は、企業の収益性とビジネスモデルの
持続可能性に結び付けることが求められている
・投資家にとって重要なことは、(企業が)取っている行動や、
ビジネスモデルに影響を与えているESG要因を定量化できること
・特定のビジネスモデルは20~30年後にはなくなっているかもしれない

▼ ESG情報を市場に配信する最善の方法とは?
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
・企業が投資家にサステナビリティ情報を知らせるために
特定のESGロードショーを実施する必要はない
(通常のロードショーに統合することができる)
・株式投資家と債券投資家の両方が、ビジネスモデルに影響を与える
ESG要因をすべて認識できるようにする
・ESG情報を企業のウェブサイト上で開示する
(ウェブサイトは投資家が最初に見に行く場所)
・企業のサステナビリティプログラムに関して、取締役会と
投資家対応担当の経営幹部をループに入れておくことが重要

∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
◆ 参考・出典一覧
IR Magazine 2019年12月4日
『How to upgrade your ESG communications』
https://www.irmagazine.com/esg/how-upgrade-your-esg-communications

IRの変遷10年

▼ ファイナンスからデータサイエンスへ
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
未来を予測するのは難しいことですが、IRはファイナンスに
重点をおいた役割から、データサイエンスへと立ち位置を変えて、
さらに進化すると予測されています。

▼ 金融危機によりIRへの要求が変化
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
2010年の金融業界は、依然として世界金融危機の影響を
引きずっていました。ポルトガル、イタリア、ギリシャ、スペインは
国として実質的に破産しており、大手銀行の業務は行き詰まり、
世界中の中央銀行が大胆な金融政策を迫られました。

この金融危機はIRへ大きな影響を与えました。2007年以前は、
IRの役割の大部分がコミュニケーションであり、
会社に有利な成長ストーリーを伝え、投資家に対してアピールすることが
重視されていました。

しかし、金融危機の後、IRは新たな役割を求められるようになりました。
今後再び発生する可能性があるリスクを回避する方法や、
好景気の際の需要の増加にどのように対応するのかなどについて、
詳細な説明が求められるようになったのです。

また、これまでにないレベルのデータや詳細な情報の開示も
求められるようになりました。

▼ ファイナンスの専門家がIRを担当
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
投資家はより詳細な情報や透明性を求めるようになり、
会社の財務をより細かく調査するようになりました。
これにより、IRから情報を自社に有利なように伝えるといった
スピン的な要素も消えていきました。

IRが金融業界との新しいパートナーシップを深めると同時に、
金融知識に精通した専門家がIRを担当するようになりました。
金融業界に精通したIROが生まれることで、アナリストや投資家と
対等な立場も築かれるようになりました。

▼ テクノロジーに造詣の深いIRの必要性
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
そして現在、IRは新たな転換期を迎えています。
テクノロジーによって投資環境が変わってきており、IRも対応を
迫られています。アナリストは機械学習と自然言語処理を使用して
企業の株式の動向をチェックするようになり、投資家はアルゴリズムや
スマートコンピュータプログラムを通じて取引するようになっています。

▼ IR成果の定量化の可能性
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
2020年代には、企業評価に影響を与える要因をデータサイエンスを
使用して分析するのと同様に、企業の株式市場でのパフォーマンスに対する
IRの貢献度を特定できると予測されています。

これは、IRのROIを正確に定量化できるようになることを意味するため、
長年問われてきた「IRの役割とは」という疑問にある程度の答えが
与えられることになりそうです。

∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
◆ 参考・出典一覧
IR Magazine 2019年12月12日
『The 2010s in review: Investor relations – From finance function to data science』
https://www.irmagazine.com/technology-social-media/2010s-review-investor-relations-finance-function-data-science

視覚とストーリーのバランスをとったIR資料作成

プレイン・イングリッシュを使った資料のデザインには、
チャートやグラフ、表を使うことをお勧めしています。
視覚に訴えることで、情報の概要を分かりやすく伝えることができます。

これにより、過剰な情報が世の中に溢れていることに疲れている
読者の目と心を惹きつけることができ、重要なデータを読者に訴え、
アクションを生み出すことができます。

あらゆる資料の目的は、読者のアクションを引き出すことにあります。

データだけ掲載すると、ストーリーが伝わらない場合もあります。
過去5年の売上トレンドの資料を作る際に、特に通常と異なる傾向や
取引が存在しない場合は、視覚に訴えるデータだけの掲載で問題ありません。

しかし、買収や売却、売上に影響を与える会計規則の変更などが
あった場合は、データにストーリーを結びつけることが非常に
大切になります。

最近浸透してきている取締役会スキルマトリックス*でも同様です。
高いレベルでの経営が行われ、業績が高く、取締役会が比較的
安定している場合、ストーリーは説明する必要はあまりありません。

しかし、課題や、スキャンダル、業績の低迷、取締役会の変動などが
あった場合、関連するストーリーを伝えることの重要性が大きく上がります。

取締役会以外の場所においても、当てはまる例は多くあります。

たとえば、台風などの自然災害の避難計画を見てみましょう。
このような場合、ダイアグラムは非常に有効です。しかし、台風や地震などに
慣れていない外国人を対象として情報を提供する場合、
ストーリーつまり背景に関する説明が必要になります。

ダイアグラムに説明を付けることで、日本の災害に慣れている外国人は
ダイアグラムから情報を得ることができ、慣れていない外国人は
説明をしっかり読んで情報を得ることができます。

また、飛行機での安全情報にも同じことが当てはまります。
初めて飛行機に乗る人は、細かいインストラクションを読まないと
安心することができないでしょう。

しかし、頻繁に飛行機を利用する乗客の場合、自分の座席から
非常口への行き方などその機体に特定の情報を動画で提供することが
有効かもしれません。

視覚とストーリーをバランスよく使用するためにあたって、
次の点に注意する必要があります。
1.詳しい説明を必要とする状況を考慮する
2.さまざまな読者が存在し、それぞれの知識レベルや
コンテクストへの親しみ度によってニーズが異なることを意識する
3.読者にどのようなアクションを取ってほしいのか
(使用しているビジュアルはアクションに結びつくか?)

∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
◆ 参考・出典一覧
*https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/33185/000130817917000063/lefx2017_def14a.htm#lefxa004 (page 16)