2024年、一歩先を行くIRコミュニケーション

基本に立ち返りつつ、テクノロジーを活用

競争が激しく情報過多の現代において、投資家の関心を引きつけ、信頼を築くのは容易ではありません。あふれるノイズの中でも自社のメッセージを届けるためには、基本に立ち返りながらも、最新のトレンドを意識する必要があります。2024年に、一歩先を行く投資家向けコミュニケーション戦略を構築するためのポイントをご紹介します。

明瞭で簡潔なメッセージ

投資家は情報を理解するのに時間がかかることを嫌います。簡潔でインパクトがあるメッージを意識しましょう。バリュー・プロポジション、成長ドライバー、強みなどをわかりやすく表現します。

マルチチャネルでの情報発信

多様化が進む現在、投資家や消費者が使うプラットフォームも多様になっています。情報ハブとしてのウェブサイト、また、動画、ソーシャルメディア、既存のメディアなど、複数のチャネルでそれぞれのチャネルの特徴を活用したコミュニケーションが求められています。

一貫性と透明性

情報の一貫性と透明性は、投資家との信頼を築く上で必要不可欠です。目標やパフォーマンスのベンチマークを明確にし、定期的に進捗状況を報告することが重要です。

また、チャネルやオーディエンスによって情報発信のトーンを調整するなかで、複数のチャネル間において情報のゆらぎがないようにすることも忘れないでください。

テクノロジーの活用

AIを活用したパーソナライゼーションが注目されています。過去のデータ分析を通して、投資家が何に関心を持っているかを把握し、それに応じてコミュニケーションを調整することができます。

例えば、おすすめのコンテンツを配信したり、投資家の質問に自動的に回答したりと、投資家一人ひとりに合わせたコミュニケーションが実現します。

また、投資家からの基本的な問い合わせに自動的に対応できるため、より複雑なやりとりにリソースを割くことができ、投資家とのより深い関係構築に注力することができます。

パーソナル・タッチ

デジタルツールは有用ですが、人間関係の構築も大きなカギとなります。直接顔をあわせるミーティング、カンファレンス、ロードショーは、直接対話を促進し、自社のストーリーを共有しながらも投資家のニーズを理解する上で、依然として貴重です。

これらの要素を組み合わせ、さらに情報過多になることが予想される2024年においても投資家との信頼関係を築き、メッセージが伝わるIRコミュニケーションを実現していきましょう。

多言語翻訳の留意点

弊社では、英語以外の言語の翻訳依頼も数多くお問い合わせをいただいております。今回はその中でもご依頼の多い言語について、特有のルールや翻訳時の留意点についてご紹介します。

中国語

中国語には「簡体字」と「繁体字」の2種類があり、地域によって使われる字体が異なります。「簡体字」は従来の漢字を簡略化した字体体系となり、北京や上海など中国大陸の方に向けた文章を作成するときに用いられます。「繁体字」は系統的な簡略化を経ていない、筆画が多い漢字の字体体系です。台湾、香港、マカオの方に向けた文章を作成するときには、繁体字を用いるのが一般的です。

タイ語

タイ語は改行の位置が変わることで、その言葉の意味自体が変わり誤解を招く可能性があります。例えば「単語」の途中で改行を入れてしまうと単語として成り立たなくなってしまいます。また、ベトナム語についても改行によって意味が変わることがありますので同様に注意が必要です。

スペイン語

スペイン語を使用する人口は、英語や中国語に続き、世界で3、4番手を争う人数といわれています。しかし、中国語同様に使用地域を確認することでよりスムーズなコミュニケーションが可能になります。スペイン語には「エスパニョール(スペイン本土向け)」と「カスティリャーノ(中南米(ラテンアメリカ)向け)」の2種があり、基本的にはどちらを利用しても相互間での理解はおおよそ可能です。ただし、同じ意味でも使用する単語の違いや動詞の活用の違いなど、細かな違いが多く見られるため、使用地域によって使い分けることで誤解のないスムーズな対話が可能となります。

今回は一部言語を抜粋してご紹介しましたが、上記のように、各言語によって翻訳時の注意点は異なります。翻訳をご依頼の際には事前に対象地域をご指定いただくとスムーズな手配が可能です。もちろん、対象地域をご存知でなくてもご提案が可能です。ぜひお気軽にご相談ください。

米国トレンド:IRイベント
大規模カンファレンスからターゲットを絞ったコミュニケーションへ

米国で行われるIRカンファレンスへの参加は、米国企業そして海外企業にとっても、投資家との重要なつながりを築く重要な場とされています。そんな中、生まれている変化が注目されています。従来の大規模カンファレンスから、より深い関係を築く小規模かつ能動的なイベントを重視する傾向です。

今日の投資家は、単なる財務データや派手なプレゼンテーションだけではなく、企業文化や価値観、経営実態も投資判断に取り入れています。大規模なカンファレンスではこのような情報は伝えにくく、またターゲットを絞ったコミュニケーションも難しくなっています。

今回は、より深い関係を築くために効果的なIR活動を行う上で注目されているアプローチを紹介します。

カンファレンスの厳選

  • すべてのIRカンファレンスに参加するのではなく、具体的な目標や投資家のニーズに基づいて参加を選択します。
  • 主要な投資家ターゲットや関心のある分野に焦点を当てます。

ノンディール・ロードショーの実施

  • 特定のトピックに焦点を絞った小規模な集まりを通じて、ターゲットを絞ったディスカッションを提供します。
  • 関連性の高いトピックでの会話を通じて、有益なつながりを築きます。

企業全体の紹介

  • 取締役会とのミーティングだけにとどまらず、本社や事業拠点の見学や投資家訪問を行います。
  • 企業文化や事業運営、ESG原則へのコミットメントを直接感じさせることで、投資家に有益な印象を与えます。

エンゲージメント戦略との組み合わせ

  • 一つのアプローチではなく、自社の投資家の嗜好や目的に合わせてさまざまなイベントを組み合わせます。
  • バーチャル・ミーティングやウェビナー、少人数のグループ・ミーティングを大規模な対面イベントと組み合わせて活用します。

メッセージとアプローチの調整

  • 同じプレゼンテーションを繰り返すのではなく、オーディエンスやイベントのテーマに沿ってメッセージやアプローチを調整します。
  • ターゲットとなる投資家をリサーチし、彼らの関心や懸念に対応します。

自社の可能性を理解する投資家との関係を築く

投資家とのつながりを量的なものではなく、質的なものとして捉え、パーソナライズした情報提供やコミュニケーションが求められています。戦略的で的を絞ったアプローチを通じて、長期的な関係を築くことが重要です。