ESG投資、米国より欧州で盛ん

投資運用業界におけるESGの浸透状況を理解するための調査を
Financial Analysts Journalが実施しました。その結果、ESG投資は
米国よりも欧州で盛んに行われていることが分かりました。
調査結果の概要を紹介します。

・米国の回答者75%が、投資決定を行う際にESG情報を活用

・欧州の回答者84%が、ポートフォリオ構築の際にESG情報を活用

・ESGを投資指標として導入しているのは、
 ESG情報が投資パフォーマンスにとって大きな影響を与えるため(63%)

・現在と将来のクライアントからの要求が、
 ESGを投資指標に採用している大きな外部要因

・倫理的な観点からESG指標を導入している欧州の回答者は41%、
 対して米国は19%

・ESG投資を行うにあたり、もっとも注力している点は
 株主とのエンゲージメント(欧州48%、米国は27%)

・ネガティブ・スクリーニング(ESGスコアの低い企業を
ポートフォリオから排除)を行うと答えた回答者が30%、
ポジティブ・スクリーニング(ESGに積極的に取り組んで
いる企業を選択)を行うと答えた回答者が13%

(注:ポジティブ・スクリーニングの方がネガティブ・
スクリーニングよりも詳細な分析とエンゲージメントが求められます)

・ESG投資プロセスの未来としては、ポジティブ・スクリーニングの
方が重要であるという回答が主流

ESGを採用していない投資家(18%)のうちの25%が、ESG指標を
採用しない理由として、重要な非財務情報を入手できないことを
挙げています。また、データ収集や分析に必要な膨大なコストも
ESG投資の障害となっています。

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◆参考・出典一覧
『ESG investing more popular in Europe than US, survey finds』
https://www.corporatesecretary.com/articles/esg/31319/esg-investing-more-popular-europe-us-survey-finds

ESG投資における注目の2019年トレンド

▼ESGがさらに投資戦略に組み込まれる1年に
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ここ数年で大きな変化を遂げているESG投資の分野で、
今年特に注目すべきトレンドを紹介します。

▼財務情報に統合された形で提供されるESG戦略
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これまで、資産運用会社は自分たちの投資価値に合わない株式は、
ポートフォリオから排除してきました。しかし、現在では、
ESGを従来の財務情報をサポートする情報として活用するように
なってきており、特に長期投資家に価値を提供する投資として、
多くの注目を集めています。

これは、ESG関連のデータが多数入手可能になり、研究が進んだ
ことも一因です。ESG関連の情報が投資プロセスにとって重要
であることが証明されてきたのです。また、米国サステナビリティ
会計基準審議会(SASB)などのフレームワークが整備されてきている
ことで、投資家にとって重要なESG活動を企業が開示しやすい環境が
生まれてきています。

さらに、特にヨーロッパにおいて、投資プロセスにESG情報を
含めることが義務化されるなど、規制当局も動きだしています。

▼気候変動に関するソリューションは、リスク削減から適応へ
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これまでは、企業がどのように気候変動のリスクを削減するかが
特に注目されていました(二酸化炭素の削減など)。
しかし、異常気象が増え、気候変動が経済活動に与える影響が広く
認識されるようになってきた現在では、気候変動にどのように対応
していくのかに関する情報開示も求められています。

▼そのほかの注目事項
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・従来、ESGに関するデータを入手できる第三者機関はほとんど
存在せず、投資家は一つの情報源からESGデータを入手していました。
しかし、ESGがより注目されている現在、複数の情報源から情報を
入手することができるようになっています。

・ESGが投資指標としてさらに注目をされるにあたり、従来の財務情報
と同じように成果を測定できるシステムが求められるように
なっています。また、エネルギー強度やESG全体のプロファイルなど
を含めた質の高いESG報告書に対する要求も高まっています。

・ESGに対応するためには、能力のある人材を確保することが
必要不可欠です。また、ESG関連の情報を統合するために、
IR関連の人材にトレーニングを提供し、データ、分析レポートの
インフラストラクチャに投資することも求められています。

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◆参考・出典一覧
2)『Five trends changing the ESG investing landscape in 2019』
IR Magazine 1月25日
https://www.irmagazine.com/buy-side/five-trends-changing-esg-investing-landscape-2019

機関投資家、今まで以上にESG関連の株主提案を支持

▼個人投資家と機関投資家の違いも浮き彫りに
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環境や社会問題に関連する株主提案への支持が5年前と
比べ10%増加(19%から29%)していることがブロードリッジ社と
PwC社ガバナンスインサイトセンターによる
調査(米国4,090社を対象)で明らかになりました。

また、この調査では機関投資家と個人投資家の投票傾向の
違いも浮き彫りになりました。2018年、機関投資家と
個人投資家の間での違いが目立った調査結果を紹介します。

・社会・環境に関する提案に賛成した機関投資家は29%、
対して個人投資家はわずか16%
・政治献金に関する提案に賛成した機関投資家は29%、
対して個人投資家は21%
・プロキシーアクセスに関する提案に賛成した機関投資家は35%、
対して個人投資家は13%
・所有する株式の投票権を行使する機関投資家は91%、
対して個人投資家は28%のみ
・プロキシーアクセスに関する株主提案の数は、
2015年の81件から、2018年には24件に減少
(これはプロキシーアクセスを 採用している企業が
増加したことが主な理由。S&P 500社では65%が採用)

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◆参考・出典一覧
『Social and environmental support continues to
grow among institutional investors』
IR Magazine 2018 年10月4日
https://www.irmagazine.com/esg/social-and-environmental-support-continues-grow-among-institutional-investors