ESG関連のコミュニケーションをアップグレードする

▼ 株主が求めているのは定量化
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IRマガジンが主催したESGインテグレーション・フォーラム
ヨーロッパでのインタビューで専門家が次のことを述べました。

・ESG 情報をリリースする企業は、企業の収益性とビジネスモデルの
持続可能性に結び付けることが求められている
・投資家にとって重要なことは、(企業が)取っている行動や、
ビジネスモデルに影響を与えているESG要因を定量化できること
・特定のビジネスモデルは20~30年後にはなくなっているかもしれない

▼ ESG情報を市場に配信する最善の方法とは?
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・企業が投資家にサステナビリティ情報を知らせるために
特定のESGロードショーを実施する必要はない
(通常のロードショーに統合することができる)
・株式投資家と債券投資家の両方が、ビジネスモデルに影響を与える
ESG要因をすべて認識できるようにする
・ESG情報を企業のウェブサイト上で開示する
(ウェブサイトは投資家が最初に見に行く場所)
・企業のサステナビリティプログラムに関して、取締役会と
投資家対応担当の経営幹部をループに入れておくことが重要

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◆ 参考・出典一覧
IR Magazine 2019年12月4日
『How to upgrade your ESG communications』
https://www.irmagazine.com/esg/how-upgrade-your-esg-communications

株主招集通知におけるESG開示、大幅に進化

専門家によると過去3年の間に、株主総会招集通知における
ESG開示は大きく進化してきました。
企業はESG関連のさまざまな課題に直面しており、
その重要度もさまざまです。
しかし、全体として株主総会招集通知におけるESGセクションは
毎年拡大しており、充実してきています。
株主総会招集通知におけるESG開示の進化の過程としては、
次のプロセスをたどっています。
1年目:「ESG課題に注目しています」
2年目:「これが私たちのESGゴールです」
3年目:「ゴールに対する進捗はこのようになります」

また、取締役会のリスク監視、役員採用、株主エンゲージメント、
取締役会評価、報酬設定などの取締役会プロセスの開示においても
進化が見られます。企業はこれらのプロセスや、その仕組み、
結果を開示するようになっているほか、開示にあたってビジュアルを
有効活用するようになってきています。
このようなことを行っている企業はほんの数年前までわずか数社でしたが、
今では実施している企業は数十社となっています。
そのほか顕著な傾向として、CEOからのあいさつだけに留まらず
独立役員または独立取締役会長からのあいさつを記載する企業が
増えてきています。さらには、事業戦略と役員報酬の関係の詳細を
開示したり、取締役を身近に感じてもらうために
取締役の写真や個人的な情報を掲載したりするなど、
ESG開示の進化は進んでいます。

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◆ 参考・出典一覧
IR Magazine 2019年10月8日
『Report highlights evolving ESG disclosure in proxy statements』
https://www.irmagazine.com/reporting/report-highlights-evolving-esg-disclosure-proxy-statements

CII、ESGと人的資源に関する開示を求める

▼ 人的資源管理が企業の業績に強く関連
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全米機関投資家協議会 (CII) は、米上院銀行委員会に対して
公開レターを送り、人的資源の管理とESGに関する報告を
向上させる必要性を呼びかけました。その中で、機関投資家と
個人投資家の両方が、人的資源管理に対するアプローチについて、
明瞭で比較可能な情報を強く求めているとしています。業績と
優れた人的資源管理が強く関連しているという調査結果が数多く
発表されており、人的資源は企業にとって重要なバリュードライバーと
なっています。しかし、重要な指標がデータ化されにくいため、
人的資源に関する情報開示はこれまで進んできませんでした。
これに対し、量的また質的の両方の要素に関して情報を開示していく
時代になったと公開レターでは述べられています。


▼ 定型からの脱出が求められるESGリスク開示
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ESGリスクの開示についても、それぞれのリスクが実際に企業に
対してどのような影響を与えるのかについて考察した開示が
行われておらず、定型的な開示に留まっていると指摘されています。
そのため、投資家は実際にリスクが現実になる可能性やリスクの規模を
理解できないとしています。ESGに関する明瞭で比較可能な情報は、
投資家と米国市場に役立つと考えられています。企業報告に関する
対話(CRD) など、プライベートセクターが行っているESG開示に
関する規格の統合性を高めることの重要性も指摘されています。


▼ 今後に向けた動き
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CRDは、企業の報告フレームワーク、規格、そのほかの要件などの
間における一貫性や統一性、比較可能性を促進することを
目的として、国際統合報告委員会(IIRC) が立ち上げました。
CDP、気候変動開示基準委員会(CDSB)、財務会計基準審議会(FASB)、
グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)、
国際会計基準審議会、国際標準化機構およびサステナビリティ
会計審議会(SASB)がメンバーとして参加しています。
昨年の11月には、異なるフレームワークの連携を促進するための
2年プロジェクトが立ち上げられました。

CIIは、重大なESGリスクについては通常の開示レビューに
含めるように企業に働きかけることをSECに求めています。
ただし、ESG関連の報告要件の義務化は当面実現しそうにありません。

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◆ 参考・出典
『CII targets better ESG and human capital disclosure』
IR Magazine 2019年4月19日
https://www.irmagazine.com/esg/cii-targets-better-
esg-and-human-capital-disclosure