日本語の原文が翻訳の質を左右する?!

より高品質な翻訳を実現するための注意点

2025年4月からの東証プライム市場上場企業に対する英文開示義務化に伴い、企業にとって日本語文書の英語翻訳はますます重要になっています。実は、翻訳を依頼するにあたり、日本語文書自体にひと工夫することで、より高品質な英訳を実現することができます。

今回は、翻訳会社に依頼する日本語文書を作成するにあたり、質の高い翻訳につながるポイントをご紹介します。

1. 読みやすい日本語

一般的な日本人にとって読みやすい日本語は、翻訳者にとっても翻訳しやすい日本語です。読みやすい原文は、翻訳者が原文の解釈に費やす時間を短縮し、読者を意識した質の高い翻訳を生み出すために時間をかけることができます。

  • 短い文を使う: 長い文は読みづらいため、適度に短く区切ることをお勧めします。
  • 専門用語は避けるか定義する: 専門用語や難しい表現は避け、誰にでもわかる表現とすることをお勧めします。専門用語が必要な場合は、定義を掲載するとよいでしょう。
  • 繰り返しを避ける:繰り返しが多い日本語は、読みにくいだけでなく、翻訳を依頼する際のコストがかさんでしまいます。何を伝えたいかを明確にした、繰り返しのない文書は、読みやすさの向上とコスト削減の両方につながります。

2. 文化的配慮をした表現

翻訳者は、翻訳後の表現がその文化圏にとって適切かを常に判断しています。必要に応じて意訳を行いますが、よりスムーズな翻訳プロセスのためには、次のことに注意してください。

  • 日本独自の表現や慣用句を避ける:翻訳対象となる言語圏の文化や習慣に馴染みのない日本独自の表現や慣用句を避けることで、翻訳がスムーズに進み、誤解が生まれない表現につながります。
  • 文化的に中立な表現を使用する:翻訳対象となる言語圏の文化や価値観を尊重し、文化的に不適切とされる表現は避けましょう。

3. コミュニケーションとコラボレーション

  • 背景情報を提供する:翻訳会社に対して、資料の内容や作成目的、ターゲットとなる海外読者などの背景情報を提供することで、より希望に沿った翻訳が実現します。
  • フォーマットに適した表現:プレゼンテーション用のパワーポイントに余白がなく、読めないほど大量の文章や図表などを詰め込んでいませんか?そのようなパワーポイントを作成すると、英文になった時に、フォーマットに合わない文書になってしまいます。フォーマットに問題がないか、翻訳会社に相談してみるとよいでしょう。
  • 指定の訳語を掲載した用語リストを提供する:指定の訳語がある場合は、翻訳会社に用語リストを提供することで、訳文を確認する際の手間が省け、翻訳プロセスがスムーズになります。
  • どこまで原文に忠実な訳が良いのかを考える:原文に忠実に訳することにこだわりすぎると、翻訳言語圏の読者の誤解を招いたり、不快感を与えたりする可能性があります。読者が受ける印象を同じにしたいのか、単語と単語の意味を同じにしたいのかは、同じ翻訳でも全く違うプロセスになります。

まとめ

これらのポイントを参考に、日本語文書や翻訳依頼を工夫してみてください。より高品質な英訳を実現し、グローバルな情報発信を成功させるお力になれれば幸いです。

多言語翻訳の留意点

弊社では、英語以外の言語の翻訳依頼も数多くお問い合わせをいただいております。今回はその中でもご依頼の多い言語について、特有のルールや翻訳時の留意点についてご紹介します。

中国語

中国語には「簡体字」と「繁体字」の2種類があり、地域によって使われる字体が異なります。「簡体字」は従来の漢字を簡略化した字体体系となり、北京や上海など中国大陸の方に向けた文章を作成するときに用いられます。「繁体字」は系統的な簡略化を経ていない、筆画が多い漢字の字体体系です。台湾、香港、マカオの方に向けた文章を作成するときには、繁体字を用いるのが一般的です。

タイ語

タイ語は改行の位置が変わることで、その言葉の意味自体が変わり誤解を招く可能性があります。例えば「単語」の途中で改行を入れてしまうと単語として成り立たなくなってしまいます。また、ベトナム語についても改行によって意味が変わることがありますので同様に注意が必要です。

スペイン語

スペイン語を使用する人口は、英語や中国語に続き、世界で3、4番手を争う人数といわれています。しかし、中国語同様に使用地域を確認することでよりスムーズなコミュニケーションが可能になります。スペイン語には「エスパニョール(スペイン本土向け)」と「カスティリャーノ(中南米(ラテンアメリカ)向け)」の2種があり、基本的にはどちらを利用しても相互間での理解はおおよそ可能です。ただし、同じ意味でも使用する単語の違いや動詞の活用の違いなど、細かな違いが多く見られるため、使用地域によって使い分けることで誤解のないスムーズな対話が可能となります。

今回は一部言語を抜粋してご紹介しましたが、上記のように、各言語によって翻訳時の注意点は異なります。翻訳をご依頼の際には事前に対象地域をご指定いただくとスムーズな手配が可能です。もちろん、対象地域をご存知でなくてもご提案が可能です。ぜひお気軽にご相談ください。

「用語集」はお持ちでしょうか?

弊社ではお客さまから翻訳のご依頼を受ける際、用語集をお持ちかどうか確認させていただいております。

用語を統一することで、翻訳の品質向上が期待できます。

用語集のメリットは以下の通りです。

・固有名詞や、お客さま特有の用語の統一

・翻訳スピードのアップ(翻訳の際に定訳を調べる作業の削減)

・お客さまが訳文をレビューする際の効率アップ(用語確認作業の削減)

・用語のブレによる読み手の誤解を避けられる

弊社では以下の内容で用語集を作成しています。

・エクセルファイル(並び替えや重複確認がしやすいため)

・基本項目は「日本語」、「英語」、「出典」、「更新日」、「備考」

・1単語につき、1つの訳語

部署ごとに別の翻訳会社に翻訳を依頼しているようなケースでは、全社で用語の統一ができていないというお悩みをうかがいます。日本語、英語問わず、用語や表現を全社的に統一していく必要性は、皆さま意識されながらも、すぐには取り掛かれない課題とお見受けしています。

用語集の作成をはじめ、グローバルコミュニケーションでお困りのことがあればご相談ください。