トランスクリエーション

「トランスクリエーション」という言葉を皆さんはご存じでしょうか?
多くの方にはあまり馴染みのない言葉かもしれませんが、「トランスクリエーション」は現在、広告やマーケティングなどの分野で注目されている翻訳の手法です。
本日はそんな「トランスクリエーション」について学んでいきましょう。

「翻訳」+「創造」?

トランスクリエーション(transcreation)とは、「翻訳(translation)」と「創造(creation)」を組み合わせた造語です。
トランスクリエーションは簡単に言うと、「意訳して、訳文に訴求力やインパクトを持たせる」ことを意味します。
しかし、「意訳して、訳文に訴求力やインパクトを持たせる」と言われてもピンとこないかもしれません。
「トランスクリエーション」を理解するうえでは、トランスクリエーションの実例をみてみるとよいでしょう。

洋画のタイトルにみる――トランスクリエーションの実例――

映画のタイトルでは、トランスクリエーションの技術が使われています。
例として、「アナと雪の女王」の原題を上げてみましょう。
「アナと雪の女王」の原題は「Frozen」。日本語にすると「寒さで凍った、氷結した」などの意味となり、日本の子どもたちにとっては寒々しいイメージしか浮かび上がらないかもしれません。
しかし、こちらの原題「Frozen」を「アナと雪の女王」へと「トランスクリエーション」することで、ディズニー作品らしいファンタジックなイメージを持つ邦題に変わりました。

トランスクリエーションの活用

今回はトランスクリエーションの例として、外国映画の魅力的な邦題を紹介しました。
日本の作品でも、スタジオ・ジブリの名作「千と千尋の神隠し」があります。
こちらの英語版タイトルは「spirited away」で、「神隠し」を意味します。
邦題に比べるとびっくりするくらいに短く、シンプルになっていますね。

アカデミー賞などで、日本映画が候補に挙がった時などに海外に向けて英訳されたタイトルをチェックしてみると、新しい発見があるかもしれません!

Designed by Freepik

プレインジャパニーズを意識したスピーチ

簡潔でわかりやすい日本語表現であるプレインジャパニーズ。
プレインジャパニーズは文書だけでなく、スピーチにも活かすことができるのです!
今回は先日行われた東京都知事選挙で、大きな話題となった石丸伸二氏の街頭演説でのスピーチを分析しながら、プレインジャパニーズについて学んでいきましょう。

石丸伸二氏のスピーチを分析

弊社では日本語の文章の読みやすさを計測するツールとして、東京大学と「プレインジャパニーズの読みやすさ診断ツール」を共同開発しております。
こちらを使って石丸氏のスピーチを分析してみました。すると、以下のような結果が出ました。

〇石丸氏のスピーチの分析結果

学年レベル一文あたりの文字数
中学3年生27文字

学年レベルとは、内容がどの学年の国語レベルに近いものであるのかを示す指標です。
一文あたりの文字数は、一文に含まれる文字数の平均値となります。値が低いほど、文章の長さは短く、文章が理解しやすいことになります。
今回の結果から、石丸氏のスピーチは内容も平易で、できるだけ短く簡潔な表現が使われていることがわかります。

石丸氏もプレインジャパニーズを意識している!? 

石丸氏のスピーチでは、次のようなプレインジャパニーズのテクニックが使用されています。

  • 文章が短い
  • 日常的な単語や表現を使っている
  • 簡潔な表現を使っている

ここで、スピーチの中の石丸氏の発言をピックアップしてみましょう。
「大事なのは経済です」
「東京が変われば、日本が変わります」
「東京都民の皆さんの責任は重大です」

このように、石丸氏は短く日常的な言葉で、わかりやすい表現を使いながらスピーチを行っているのです。もしかしたら、石丸氏もプレインジャパニーズを意識しているのかもしれません。

こちらの動画では石丸氏と現職の小池百合子氏のスピーチを、プレインジャパニーズの観点から比較分析を行っています。皆さんもぜひ、ご覧になってください!

ポストエディットをご存知ですか

近年、ChatGPTなどが普及しAI翻訳の利用が活発になっています。そこで今回は、機械翻訳の1つである「ポストエディット」についてご紹介します。

ポストエディットとは

機械翻訳した内容を翻訳者もしくは校閲者が修正することです。一度、機械翻訳が行われた内容について、誤訳や訳漏れ、ニュアンスの違いがないかを確認し修正をします。人手による通常翻訳よりも時間やコストが削減され、効率が良い翻訳方法の1つです。

ポストエディットの活用について

このような便利なポストエディットでも、すべてのドキュメントに活用できるわけではありません。あくまでも機械が翻訳するため、人間の思いや意図をくみ取ることは難しいと言われています。そのため、マニュアルなどのシンプルな文書では利用できますが、メッセージ性の強い文書は、ポストエディットではなくネイティブ翻訳を強くお勧めします。

今後、さらに利便性の高いツールが登場することでしょう。ポストエディットのような便利な方法を活用しつつ、リスクも念頭にAIとうまく付き合っていきましょう。