機関投資家、今まで以上にESG関連の株主提案を支持

▼個人投資家と機関投資家の違いも浮き彫りに
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環境や社会問題に関連する株主提案への支持が5年前と
比べ10%増加(19%から29%)していることがブロードリッジ社と
PwC社ガバナンスインサイトセンターによる
調査(米国4,090社を対象)で明らかになりました。

また、この調査では機関投資家と個人投資家の投票傾向の
違いも浮き彫りになりました。2018年、機関投資家と
個人投資家の間での違いが目立った調査結果を紹介します。

・社会・環境に関する提案に賛成した機関投資家は29%、
対して個人投資家はわずか16%
・政治献金に関する提案に賛成した機関投資家は29%、
対して個人投資家は21%
・プロキシーアクセスに関する提案に賛成した機関投資家は35%、
対して個人投資家は13%
・所有する株式の投票権を行使する機関投資家は91%、
対して個人投資家は28%のみ
・プロキシーアクセスに関する株主提案の数は、
2015年の81件から、2018年には24件に減少
(これはプロキシーアクセスを 採用している企業が
増加したことが主な理由。S&P 500社では65%が採用)

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◆参考・出典一覧
『Social and environmental support continues to
grow among institutional investors』
IR Magazine 2018 年10月4日
https://www.irmagazine.com/esg/social-and-environmental-support-continues-grow-among-institutional-investors

アクティビスト活動の未来

▼2019年以降の傾向と対策
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2018年、アクティビスト活動は大きく増加しました。
そのような状況の中、アクティビスト・キャンペーンが
企業に与える影響、そして今後の傾向についての注目すべき
トピックスが発表されました。その中でも特に留意すべき点を
紹介します。

▼アクティビストの影響はキャンペーン後も継続
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アクティビスト活動が仕掛けられると、キャンペーンの要求が
満たされたからと言って、アクティビストからの影響が
なくなるわけではありません。特にアクティビストによって
新しく取締役が据えられた場合など、取締役会の方針が大きく変わり、
M&Aや事業戦略、経営陣全体にも変化が起きる場合があります。

また、一度アクティビズムのターゲットになると、
再度ターゲットになる可能性も高くなっています。
2017年にアクティビスト活動のターゲットになった企業の20%は、
過去5年間においてもターゲットになっています。

▼アクティビストの活動はよりアグレッシブに
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近年のアクティビスト投資ファンドの業績は、
芳しくありません。そのため、米国においては簡単に利益を
狙えそうな企業がターゲットにされています。
アクティビスト活動によって利益が出ていないということは、
将来的にはアクティビスト活動が減少する可能性を示唆しています。
しかし、同時に、利益の獲得を目指して、M&AやCEOの
すげ替えなどのアグレッシブな活動が行われる可能性もあります。
また、同じ理由からアクティビスト活動が米国から
海外へと拡大しています。

▼セクハラに関する問題に、さらに注目
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アクティビスト投資家は、キャンペーンや株主投票で利用できる
情報を探すために、企業の内情に関する情報収集を行います。
特に2019年以降は職場でのセクハラやパワハラなどに関する
情報を入手して利用してくることが予測されています。

今後、有名企業に対するアクティビスト活動の際に、
このような情報がガバナンス問題やCEO交代の引き金に
なると考えられます。

▼能動的に計画を立てて、リスクを緩和する
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アクティビスト活動に対応するには、先回りして能動的な対策を
取ることが不可欠です。また、業績をしっかり出すことに集中し、
計画を確実に遂行することも効果的なリスク削減になります。
さらには「アクティビストの立場で考える」ことも大切です。
アクティビスト活動の標的になり得る自社の課題を特定した上で、
対策を練る必要があるかを検討し、もし必要がある場合は
なるべく早めに行動します。株主とのエンゲージメントについては
定期的に評価し、投資家からフィードバックを得るようにすると
よいでしょう。

▼リスク緩和に向けたアドバイス
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•投資家やアナリストが抱いている経営に関する懸念について、
取締役会に情報を提供します。
アクティビズムに関する情報をしっかりと共有し、
課題を認識できている経営陣は、いざという時に優れた
リーダーシップを発揮します。

•取締役に対する評価を行い、
リスクが特定された場合は緩和のための対策を行います。

•今後、M&A関連のアクティビズムがよりアグレッシブになる
可能性があります。

•CEO交代に不安要素があると、アクティビストを
引き付ける原因となります。

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◆参考・出典一覧
『Shareholder Activism – 1H 2018 Developments,
the Impact and Future of Activism, and Updated Practice Points』
Lexology 2018年9月24日
https://www.lexology.com/library/detail.aspx?g=1f3147c2-a0e7-4ab6-8c44-4fdb55018de6

IR環境の変化に対応する

▼2019年は金融商品市場指令(MiFID II)の影響に注目
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米国Crocs 社とネットスカウト社のIR責任者が、
IR Magazine上で来年のIRの注目点について対談を行いました。

▼2019年に予測されるアメリカのIR環境の変化
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Crocs 社では、金融商品市場指令の影響が大きく現れると考えています。
そのため、バイサイドに直接リーチするケースを増やすことを
目指しています。バイサイド向けコーポレートアクセスチーム設立の
成果に期待が寄せられています。

また、市場全般として、金融商品市場指令への対応が課題になると
考えられます。さらには、アクティビズムがインデックスファンドなどの
パッシブ投資家にも影響を与えていくことが予想されます。
SEC(米国証券取引委員会)がESG(環境、社会、ガバナンス)開示に
関する規制の開発に向けて動く可能性もあり、これが実現されると、
情報開示に大きな影響を与えることになります。

ネットスカウト社では金融商品市場指令やESGなどの一部の新しい
IRトレンドが、短期と長期両方のIR戦略にさらなる影響を
与えていくと考えています。株主アクティビズムも
引き続き注目されると見ています。また、テクノロジーを使用することで
ワークフローの向上や投資家へのアウトリーチにつながり、
より効果的なIRが実現すると考えています。

▼米国Crocs 社とネットスカウト社にとっての課題
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ネットスカウト社では、大きな企業買収の後の3年間で2年にわたり
重要業績評価指標を達成できなかったので、基本の業績を大切にしたいと
考えています。引き続きこれまでの計画を実践するのかどうか、
実践する場合、どのようにIRの活動を調整するべきなのかが大切な
課題となります。

業界のトレンドが変化を続けており、その変化が業績に大きな影響を
及ぼしたこと、また、トレンドに対応するべくとっている対策を
投資家に理解してもらうために、多くの時間を費やしています。

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◆参考・出典一覧
『Spotlight on US IR: What every IRO should be thinking about heading into 2019』
IR Magazine 2018年12月11日
https://www.irmagazine.com/regulation/spotlight-us-ir-what-every-iro-should-be-thinking-about-heading-2019