視覚とストーリーのバランスをとったIR資料作成

プレイン・イングリッシュを使った資料のデザインには、
チャートやグラフ、表を使うことをお勧めしています。
視覚に訴えることで、情報の概要を分かりやすく伝えることができます。

これにより、過剰な情報が世の中に溢れていることに疲れている
読者の目と心を惹きつけることができ、重要なデータを読者に訴え、
アクションを生み出すことができます。

あらゆる資料の目的は、読者のアクションを引き出すことにあります。

データだけ掲載すると、ストーリーが伝わらない場合もあります。
過去5年の売上トレンドの資料を作る際に、特に通常と異なる傾向や
取引が存在しない場合は、視覚に訴えるデータだけの掲載で問題ありません。

しかし、買収や売却、売上に影響を与える会計規則の変更などが
あった場合は、データにストーリーを結びつけることが非常に
大切になります。

最近浸透してきている取締役会スキルマトリックス*でも同様です。
高いレベルでの経営が行われ、業績が高く、取締役会が比較的
安定している場合、ストーリーは説明する必要はあまりありません。

しかし、課題や、スキャンダル、業績の低迷、取締役会の変動などが
あった場合、関連するストーリーを伝えることの重要性が大きく上がります。

取締役会以外の場所においても、当てはまる例は多くあります。

たとえば、台風などの自然災害の避難計画を見てみましょう。
このような場合、ダイアグラムは非常に有効です。しかし、台風や地震などに
慣れていない外国人を対象として情報を提供する場合、
ストーリーつまり背景に関する説明が必要になります。

ダイアグラムに説明を付けることで、日本の災害に慣れている外国人は
ダイアグラムから情報を得ることができ、慣れていない外国人は
説明をしっかり読んで情報を得ることができます。

また、飛行機での安全情報にも同じことが当てはまります。
初めて飛行機に乗る人は、細かいインストラクションを読まないと
安心することができないでしょう。

しかし、頻繁に飛行機を利用する乗客の場合、自分の座席から
非常口への行き方などその機体に特定の情報を動画で提供することが
有効かもしれません。

視覚とストーリーをバランスよく使用するためにあたって、
次の点に注意する必要があります。
1.詳しい説明を必要とする状況を考慮する
2.さまざまな読者が存在し、それぞれの知識レベルや
コンテクストへの親しみ度によってニーズが異なることを意識する
3.読者にどのようなアクションを取ってほしいのか
(使用しているビジュアルはアクションに結びつくか?)

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◆ 参考・出典一覧
*https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/33185/000130817917000063/lefx2017_def14a.htm#lefxa004 (page 16)

株主招集通知におけるESG開示、大幅に進化

専門家によると過去3年の間に、株主総会招集通知における
ESG開示は大きく進化してきました。
企業はESG関連のさまざまな課題に直面しており、
その重要度もさまざまです。
しかし、全体として株主総会招集通知におけるESGセクションは
毎年拡大しており、充実してきています。
株主総会招集通知におけるESG開示の進化の過程としては、
次のプロセスをたどっています。
1年目:「ESG課題に注目しています」
2年目:「これが私たちのESGゴールです」
3年目:「ゴールに対する進捗はこのようになります」

また、取締役会のリスク監視、役員採用、株主エンゲージメント、
取締役会評価、報酬設定などの取締役会プロセスの開示においても
進化が見られます。企業はこれらのプロセスや、その仕組み、
結果を開示するようになっているほか、開示にあたってビジュアルを
有効活用するようになってきています。
このようなことを行っている企業はほんの数年前までわずか数社でしたが、
今では実施している企業は数十社となっています。
そのほか顕著な傾向として、CEOからのあいさつだけに留まらず
独立役員または独立取締役会長からのあいさつを記載する企業が
増えてきています。さらには、事業戦略と役員報酬の関係の詳細を
開示したり、取締役を身近に感じてもらうために
取締役の写真や個人的な情報を掲載したりするなど、
ESG開示の進化は進んでいます。

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◆ 参考・出典一覧
IR Magazine 2019年10月8日
『Report highlights evolving ESG disclosure in proxy statements』
https://www.irmagazine.com/reporting/report-highlights-evolving-esg-disclosure-proxy-statements

取締役、多様性への「注力疲れ」の傾向 多様性とESGが重視される傾向は変わらず

近年、多様性とESGに関する課題は投資家と取締役会の間で
重要課題として扱われてきました。PwCが行った調査によると、
取締役はその重要性を認めながらも、多様性やESGへの過度の
注力に疲れを見せていることがわかりました。その調査結果の
一部を紹介します。

多様性全体に関する見方は引き続きポジティブ
・取締役会の多様性が企業に新しい視点をもたらすと感じる(94%)
・取締役会の多様性が取締役会のパフォーマンスを向上させると感じる(87%)
・取締役会の多様性が投資家との関係を向上させると感じる(84%)
・取締役会の多様性が企業の業績を向上させると感じる(76%)

性別多様性と人種の多様性:過度の注力からの反動
・取締役の性別多様性は非常に重要である
(38%:昨年は46%)
・人種やエスニック多様性は非常に重要である
(26%:昨年は34%)
・投資家が性別多様性を重視しすぎていると感じる
(63%:昨年は35%)
・投資家が人種やエスニック多様性を重視しすぎていると感じる
(58%:昨年は33%)

ESGに関しても反動
ESGは、投資家が重視する課題となっており、2020年の
株主総会シーズンにおいても引き続き重要課題になると
考えられています。しかし、ESGに関しても、
高まるプレッシャーにより多くの役員に
反動が現れているようです。
・投資家が環境・持続可能性の課題を過度に
重視していると感じる(56%:昨年は29%)
・投資家がCSRを過度に重視していると感じる
(47%:昨年は29%)
専門家はこの原因について、本来議論するべき課題が
ESG関連のアクションを求める投資家の声に乗っ取られた
ように感じ始めているのではないかと指摘しています。
一方で、すでに社内で実施している取り組みをESGと
結びつけることができず、社内で混乱が生まれている
ケースもあり、より洗練されたコミュニケーション戦略の
必要性も指摘されています。
投資家とのエンゲージメントに関しては、
引き続きその重要性が広く認識されるようになってきています。

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◆ 参考・出典一覧
IR Magazine 2019年10月15日
『Directors tiring of diversity and ESG focus, survey finds』
https://www.irmagazine.com/esg/directors-tiring-diversity-and-esg-focus-survey-finds