インクルーシブ・ランゲージ

「インクルーシブ・ランゲージ」について、皆さんはご存じでしょうか?
「インクルーシブ・ランゲージ」は、昨今の多様性やジェンダーの流れの中で注目されている表現方法です。
本日はそんな「インクルーシブ・ランゲージ」について学んでいきましょう!

包括的言語?

インクルーシブ・ランゲージ(Inclusive Language)は、日本語では「包括的言語」と訳されることが多いです。インクルーシブ・ランゲージにおける「包括的(インクルーシブ)」とは、ジェンダーや障がい、人種、民族、年齢、職業など、あらゆる要素を含んだ多様性を包括することを意味しています。インクルーシブ・ランゲージは、このような多様性のある社会の中で差別意識や疎外感を与えない表現方法です。

インクルーシブ・ランゲージの例

インクルーシブ・ランゲージが多様性に配慮した表現方法であることはわかりましたが、具体的にはどのような言葉になるのでしょうか?
インクルーシブ・ランゲージの例として、「policeman」を挙げてみましょう。
以前、「警察官」という言葉は英語では「policeman」と訳されていました。英語圏においても、「policeman」が違和感なく使用されてきました。しかし昨今では、ジェンダー差別的なニュアンスが含まれているとして、「policeman」ではなく、「police officer」という言葉に置き換わりつつあります。

インクルーシブ・ランゲージに置き換わりつつある言葉

「policeman」以外にも、次のようなインクルーシブ・ランゲージの例があります。

以前、使用されていた言葉 インクルーシブ・ランゲージ
ビジネスマン(businessman) ビジネスパーソン(business person)
ボーイフレンド/ガールフレンド (boyfriend/girlfriend) パートナー(partner)
ホワイトリスト/ブラックリスト (whitelist/blacklist) 許可リスト/拒否リスト(allowlist/denylist)

まとめ

これまで違和感なく上記のリストの言葉を使っていた方も多いかもしれません。
少しずつ社会が変わっていく中で、これまでの常識をアップデートしていくという姿勢が必要になってきていると言えるでしょう。

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取締役会の多様性が投資家からの信頼につながる理由

ステークホルダーの多様性を反映した取締役会

取締役会の多様性は、企業の評判や投資家の信頼に大きな影響を与えると言われています。今回は基本に立ち戻り、取締役の多様性が企業にとってどのように有益なのかを振り返っていきます。

企業に求められているのは、ステークホルダーの多様性を反映した取締役会です。例えば、女性の顧客が多い企業では、女性の役員が多い方がステークホルダーからの信頼が向上します。また、異なる背景、経験、視点を持つメンバーが集まることで、意思決定の質が向上し、リスク管理を強化し、より包括的な企業文化を育むことができると言われています。

多様性によって向上する5つの分野

  • 意思決定の質: 多様性があるということは、あらゆる視点の見方が存在し、多様な意見が交換されることです 。異なる背景を持つ人々が協力することで、集団思考に陥りにくくなり、当たり前を疑い、変化の激しい時代に必要な意思決定が実現します。
  • リスク管理:均一なグループでは見落としがちなリスクを特定し、軽減することにつながります。ステークホルダーの多様性を反映した取締役会は、ステークホルダーに関連する課題を予測し、対策を講じることができます。
  • 企業イメージ:投資家をはじめステークホルダーは、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンにコミットする企業を重視しています。異なる視点を受け入れ、多様な労働力を重視・尊重していることを強く示します。
  • イノベーション:異なる背景を持つ人々が一緒に働くことで、新しいアイデアを生み出し、現状を変える可能性が高まります。これにより、多様な顧客のニーズに応える革新的な製品やサービスが生まれることがあります。
  • 多様な労働力の確保:多様な取締役会は、組織全体に対して「多様性が重視され、尊重されている」という強いメッセージを送ります。あらゆる背景を持つ従業員が尊重され、より多様な労働力を魅了することができます。これは労働力不足が予測されている時代にとって非常に大切です。

このように、取締役会の多様性を向上させることは、多様で競争の激しいビジネス環境での成長、そして成功のための重要な足場となります。多様性を促進するための具体的な措置を講じることや、多様性に関するトレーニングの提供、すでにステークホルダーの多様性を反映した取締役会である場合はその旨をしっかりとアピールすることが重要です。

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取締役、多様性への「注力疲れ」の傾向 多様性とESGが重視される傾向は変わらず

近年、多様性とESGに関する課題は投資家と取締役会の間で
重要課題として扱われてきました。PwCが行った調査によると、
取締役はその重要性を認めながらも、多様性やESGへの過度の
注力に疲れを見せていることがわかりました。その調査結果の
一部を紹介します。

多様性全体に関する見方は引き続きポジティブ
・取締役会の多様性が企業に新しい視点をもたらすと感じる(94%)
・取締役会の多様性が取締役会のパフォーマンスを向上させると感じる(87%)
・取締役会の多様性が投資家との関係を向上させると感じる(84%)
・取締役会の多様性が企業の業績を向上させると感じる(76%)

性別多様性と人種の多様性:過度の注力からの反動
・取締役の性別多様性は非常に重要である
(38%:昨年は46%)
・人種やエスニック多様性は非常に重要である
(26%:昨年は34%)
・投資家が性別多様性を重視しすぎていると感じる
(63%:昨年は35%)
・投資家が人種やエスニック多様性を重視しすぎていると感じる
(58%:昨年は33%)

ESGに関しても反動
ESGは、投資家が重視する課題となっており、2020年の
株主総会シーズンにおいても引き続き重要課題になると
考えられています。しかし、ESGに関しても、
高まるプレッシャーにより多くの役員に
反動が現れているようです。
・投資家が環境・持続可能性の課題を過度に
重視していると感じる(56%:昨年は29%)
・投資家がCSRを過度に重視していると感じる
(47%:昨年は29%)
専門家はこの原因について、本来議論するべき課題が
ESG関連のアクションを求める投資家の声に乗っ取られた
ように感じ始めているのではないかと指摘しています。
一方で、すでに社内で実施している取り組みをESGと
結びつけることができず、社内で混乱が生まれている
ケースもあり、より洗練されたコミュニケーション戦略の
必要性も指摘されています。
投資家とのエンゲージメントに関しては、
引き続きその重要性が広く認識されるようになってきています。

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◆ 参考・出典一覧
IR Magazine 2019年10月15日
『Directors tiring of diversity and ESG focus, survey finds』
https://www.irmagazine.com/esg/directors-tiring-diversity-and-esg-focus-survey-finds