ISO、2019年9月に「プレイン・ランゲージ(平易な言語)」の国際規格化を採択

多様な人々が集うグローバルな社会では、内容が速く正確に伝わる、わかりやすいコミュニケーションが求められています。

現在では、どの国においても、SDGsやESGをキーワードとして、活動の公正さ、透明性、社会性が問われており、ステークホルダーへの適時・適切な情報開示において「プレイン・ランゲージ(平易な言語)」の重みがますます増しています。

私たち日本人にはあまり馴染みのない「プレイン・ランゲージ」ですが、英語圏に限らず、ヨーロッパや南米でも自国の言葉をプレイン・ランゲージ化する動きが盛んです。これからは日本でも、官民問わず、明確でわかりやすいコミュニケーション法が求められることでしょう。

そうした中、ISO(国際標準化機構)は、「プレイン・ランゲージ」を国際規格化することを2019年9月に採択しました。現在、ISO TC 37(言語及び専門用語に関する専門委員会)のWG11(プレイン・ランゲージに関する作業グループ)では国際規格のドラフトを作成しています。規格ができるだけ多くの国で使用できるよう、作成委員の国籍も多彩です。

国際規格が完成するまでには数年かかることが予想されますが、本メールマガジンでも情報をお伝えします。詳細は日本初のプレイン・ランゲージ推進団体Japan Plain English and Language Consortiumのホームページをご覧ください。

コロナ時代のCEO挨拶のベストプラクティス

UPS社新CEOの場合

米大手貨物運送会社UPSの新CEOとしてキャロル・トメ氏が今年の6月に就任しました。コロナウイルスの影響で世界中に不安が広がるなかでの就任です。トメ氏が就任にあたって発表した挨拶文を、新時代のCEO挨拶の優れた例として紹介させていただきます。英語挨拶文のリンクは、同社ホームページからご覧ください。
https://www.pressroom.ups.com/pressroom/ContentDetailsViewer.page?ConceptType=PressReleases&id=1591053205995-862

CEO挨拶の新しい課題

社会的な不安が高まっている世の中で、企業のCEOはそうした状況についての見解や考え方を表明することが求められています。優れた構成とシンプルな表現を使って伝わりやすく、読者の心に響く形でトメ氏はメッセージを伝えています。

感情に訴えかける構成

トメ氏自身の気持ちをシンプルながらも直接的な言葉で表現しており、社会に対する気持ちを企業のコアバリューとつなげています。流れを見ていきましょう。

・現在の環境(コロナパンデミック)における事業で大切にしていること、それに対する感謝

・現在社会が抱えている不安(ここでは多発しているアメリカの発砲事件)

・社会不安に対するトメ氏が感じている悲しみや怒り

・このような時期だからこそ大切にするべき、創業のコアバリューを紹介(社会の現状と企業のコアバリューを結び付ける)

・読者への協力の呼び掛け

この流れにより、現実を直視しながらも、前に進む姿勢がうまく表現されています。また、企業としての活動と個人としての感情を結びつけることで、読者に直接強く語りかけています。

プレイン・ランゲージ:アクション動詞を使った短くシンプルな表現

箇条書き、太字、シンプルな表現を活用し、受動態はあまり使用していません。シンプルでありながら、幼い表現でも拙い表現でもありません。ストレートで頭にイメージが浮かびやすい表現を使うことで、ここでも読者に直接語り掛ける効果を生んでいます。

世の中に不安が多く、だれもが先行きの不透明さを感じている時代、シンプルな言葉で読者に正直に語り掛けるスタイルを活用してみてください。