【セミナー参加レポート】英文IR人材育成講座
海外投資家の心をつかむ英文IRとは?

2025年10月8日・9日に東京証券取引所で開催された「英文IR人材育成講座 海外投資家の心をつかむ英文IRとは?」に参加しました。本記事では、セミナーの概要と参加者の方々が抱える課題、そして海外投資家に「伝わる英文IR」へのヒントをまとめます。

この講座は、一般社団法人東京国際金融機構(FinCity.Tokyo)と東京証券取引所が共催し、英文IRの基礎から実践までを学べるセミナーです。弊社も今年、IR支援会社としてワークショップに参加いたしました。​

セミナー概要

10月8日はスタンダード市場・グロース市場・TOKYO PRO Market・未上場企業向け、9日はプライム市場企業のIR担当者向けに構成され、2日間で約150名が参加されました。​
1日目は「これから英文開示へ取り組む方」、2日目は「既に実施して課題を持つ方」が中心でした。

主なプログラム:

  • 企業の事例に学ぶIRの工夫
  • 海外投資家の視点と「伝わる」情報発信
  • 英文IRレベルアップのカギ
  • ワークショップ&ネットワーキング

ワークショップで聞かれたお悩みの声

【1日目】

  • 人員・予算不足で英文開示が進められない
  • どの資料を英文にすべきか分からない
  • 翻訳会社への依頼後、品質を評価できない
  • 情報過多で日本語文が長く複雑になる
  • 会社自体が英文開示に消極的

【2日目】

  • AI翻訳の品質に不安がある
  • 翻訳会社の成果物が機械翻訳と同じだった
  • 海外投資家へのアプローチ方法が不明
  • 規模に応じた開示範囲が判断できない

このほか、海外メディアの方からは「日本語原稿も翻訳もプレインではない」「内容が伝わらず読みにくい」との指摘もありました。

スピードと品質を両立する鍵

実際のところ、「海外投資家の心をつかむ英文IR」の出発点は日本語原稿です。元の文が複雑だと、翻訳ツールや翻訳者の質に関わらず、英語も伝わりにくくなります。重要なのは「プレインランゲージ」の考え方です。​

弊社では、11月17日(月)に日本IR協議会様との共催で、「日英同時開示をスムーズにするためのプレインランゲージ」セミナーを開催予定です。
「一読して理解される日本語=プレインジャパニーズ」をテーマに、より伝わる英文IR発信の基礎を解説いたします。ぜひご参加ください(申込締切:11月10日(月)17時)。

詳細はこちら
2025年11月17日(月)13:00~15:40 Zoom ウェビナー+オンデマンド配信
お申し込み・詳細:一般社団法人 日本IR協議会オフィシャルサイト

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日中翻訳者の挑戦、漢字の世界:
日本語・繁体字・簡体字の違い

日中翻訳者にとって漢字は大切な存在です。台湾で使われる繁体字の繊細さと古典的な雰囲気、中国で使われる簡体字のシンプルさと効率性、そして、日本語漢字の「独自の簡略化」。同じルーツを持ちながら、それぞれの特徴も持っています。このため、実際に翻訳する際に、思わぬ落とし穴になることもしばしばです。

1. 形の違い

まず、目につくのは字の違いでしょう。下記によく見かける漢字を比較してみましょう。
学習の「学」は日本語と簡体字は同じ形になりますが、繁体字の場合は「學」になります。
国家の「国」も日本語と簡体字は同じ形になります。繁体字の場合は「國」になります。
また、「東」は日本語と繁体字は同じ形になります。簡体字の場合は「东」になります。

パッと見ると、単なる「書き方の違い」と思われますが、翻訳者にとっては無視できない問題です。例えば、日本語の本を台湾向けに翻訳する場合は、「国」をそのまま使うと違和感があるので、「國」に変換する必要があります。

2. 意味の違い

同じ漢字でも、国によって意味が変わることがあるため、翻訳では誤解を招きやすい落とし穴でもあります。
例えば:
愛人:日本語では「恋愛関係の第三者」の意味ですが、繁体字と簡体字では「配偶者・パートナー」の意味で使われます。
勉強:日本語では「学ぶこと」の意味ですが、繁体字と簡体字では「無理をする」というニュアンスになります。

これらの単語を直訳してしまうと、読者を混乱させてしまうため、単語の意味を必ず確認する必要があります。

3. 文化の違い

それぞれの国の政策が、文字の使い方や読む人の習慣に影響しています。

・中国:識字率の向上と教育の普及を目指し、文字の簡略化を推進しました。簡体字の導入により、学習の負担を軽減し、識字率の向上にもつながりましたが、一方で、文化的な部分が損失されるという声もありました。
・台湾:「中華文化復興運動」により、簡体字の導入が撤回され、これまで使われる繁体字を守ることができました。
・日本:「常用漢字表」を定め、一部の漢字を簡略化しています。

文化的背景を知っていれば、ターゲット読者が読めやすい形を適切に選択できるでしょう。

4. まとめ

漢字の世界では、日本語漢字、繁体字、簡体字は同じ起源を持ちながら、それぞれの歴史を歩んできました。
翻訳者の仕事は「単純に文字を置きかえる」ことではありません。国の文化を理解したうえで翻訳することで、一つ一つの文字が国の文化につながる橋になるでしょう。

参考資料:
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%B8%E7%94%A8%E6%BC%A2%E5%AD%97
https://zh.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E8%8F%AF%E6%96%87%E5%8C%96%E5%BE%A9%E8%88%88%E9%81%8B%E5%8B%95

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英文資料作成時にデザイン面で気を付けるポイント

英文で情報開示をする際に、誤訳がないか、用語が統一されているかはもちろんですが、デザイン面について、チェックポイントをご存知ですか。
日本語と同じままのデザインだと思わぬ落とし穴があります。
正しい知識でよりプロフェッショナルな英文情報開示をするために、今回は知っておきたい英文デザインポイントについて、3つご紹介いたします。

①欧文フォントを使用する

大前提として、日本語フォントは使用せず、欧文フォント(Times New Roman/Arialなど)を使用します。「①」や「※」などの全角記号も使いがちですが、英文資料では使用しないため、別の表記にする必要があります。意外と見落としがちな点なので気を付けましょう。また、会社のロゴに日本語が含まれている場合も、英語版を作成されることを推奨します。

②視認性のためにシンプルさを意識する

英訳すると文字の分量は日本語の2倍増えます。例えばスライドや図表内の文字が日本語の時点ですでにぎっしり詰まっている場合は、英語にすると文字が小さすぎて見えなくなってしまいます。このため、デザインを変えるか、内容を絞る必要があります。
また、強調のために、太字や赤字、キャピタライズを多用すると、文章が見づらくなり、読者に伝えたい重要なポイントがぼやけてしまいます。
スペースを十分取り入れたシンプルなデザインを意識するとよいでしょう。

③記号の意味が世界共通であるか確認する

統合報告書などで経営計画の進捗を記号で表す場合、海外の読者は、日本でよく使われる「〇=達成」「×=未達」「△=一部達成」といった記号を理解できないことがあります。

記号はパッと見てすぐに相手が理解できる点がプレインランゲージの観点からもよいのですが、その意味を読み手が理解できないと、本末転倒になってしまいます。
海外の読者に対しては、記号は使わずに「Achieved」など短い単語で表すことができます。また、記号を使いたい場合は、必ず注釈や説明文を添えて意味を明確にすることが重要です。

つまり、記号のまま示すだけでなく、例えば「〇(達成)」「×(未達)」「△(一部達成)」と説明をセットにしたり、文章や凡例で補足し、誰が読んでも誤解のない表現にしたりすることが望ましいです。
一方、「✓」という記号は箇条書きとしてよく使用されますが、達成できているという意味にもなります。「×」は「✓」と似ているため、達成/該当するなどと理解されることさえもあります。資料作成時は注意が必要です。

今回は英文開示資料における、デザイン面での注意点を一部ご紹介いたしました。
上記のポイントを英訳時に注意すると、あとで思わぬミスが起こる可能性もあるので、日本語作成時から、「文字を詰め込み過ぎない」、「海外で通じない記号は出来るだけ使用しない」などを意識して作成されると、英語の仕上がりも改善され、日本語も読みやすい資料となるのではないでしょうか。エイアンドピープルではデザイン面からも英文資料作成の提案が可能です。ご興味がございましたら、ぜひご連絡ください。

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