日中翻訳者の挑戦、漢字の世界:
日本語・繁体字・簡体字の違い

日中翻訳者にとって漢字は大切な存在です。台湾で使われる繁体字の繊細さと古典的な雰囲気、中国で使われる簡体字のシンプルさと効率性、そして、日本語漢字の「独自の簡略化」。同じルーツを持ちながら、それぞれの特徴も持っています。このため、実際に翻訳する際に、思わぬ落とし穴になることもしばしばです。

1. 形の違い

まず、目につくのは字の違いでしょう。下記によく見かける漢字を比較してみましょう。
学習の「学」は日本語と簡体字は同じ形になりますが、繁体字の場合は「學」になります。
国家の「国」も日本語と簡体字は同じ形になります。繁体字の場合は「國」になります。
また、「東」は日本語と繁体字は同じ形になります。簡体字の場合は「东」になります。

パッと見ると、単なる「書き方の違い」と思われますが、翻訳者にとっては無視できない問題です。例えば、日本語の本を台湾向けに翻訳する場合は、「国」をそのまま使うと違和感があるので、「國」に変換する必要があります。

2. 意味の違い

同じ漢字でも、国によって意味が変わることがあるため、翻訳では誤解を招きやすい落とし穴でもあります。
例えば:
愛人:日本語では「恋愛関係の第三者」の意味ですが、繁体字と簡体字では「配偶者・パートナー」の意味で使われます。
勉強:日本語では「学ぶこと」の意味ですが、繁体字と簡体字では「無理をする」というニュアンスになります。

これらの単語を直訳してしまうと、読者を混乱させてしまうため、単語の意味を必ず確認する必要があります。

3. 文化の違い

それぞれの国の政策が、文字の使い方や読む人の習慣に影響しています。

・中国:識字率の向上と教育の普及を目指し、文字の簡略化を推進しました。簡体字の導入により、学習の負担を軽減し、識字率の向上にもつながりましたが、一方で、文化的な部分が損失されるという声もありました。
・台湾:「中華文化復興運動」により、簡体字の導入が撤回され、これまで使われる繁体字を守ることができました。
・日本:「常用漢字表」を定め、一部の漢字を簡略化しています。

文化的背景を知っていれば、ターゲット読者が読めやすい形を適切に選択できるでしょう。

4. まとめ

漢字の世界では、日本語漢字、繁体字、簡体字は同じ起源を持ちながら、それぞれの歴史を歩んできました。
翻訳者の仕事は「単純に文字を置きかえる」ことではありません。国の文化を理解したうえで翻訳することで、一つ一つの文字が国の文化につながる橋になるでしょう。

参考資料:
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%B8%E7%94%A8%E6%BC%A2%E5%AD%97
https://zh.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E8%8F%AF%E6%96%87%E5%8C%96%E5%BE%A9%E8%88%88%E9%81%8B%E5%8B%95

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