ビジネス界で活躍されている素敵なPeopleをご紹介しています。
A&Peopleは、そうした素敵な方々と業務を通じて、助力となるべく連携させていただけることを誇りに思っています。

vol.16 成川 新吾さま

日立オートモティブシステムズ株式会社 CIS事業部 システムソリューション本部

クルマがエンジンを積んだ鉄の塊からカーナビをはじめとする車載情報機器により、さまざまな革新の可能性へ

カーナビをはじめとする車載情報システムの、地図制作を手がけられている成川さまに、世界でも注目を集める“クルマとITの融合”車の電動化と車載情報機器の進化について、興味深いお話をうかがいました。

「People」Vol.16は、日立オートモティブシステムズ株式会社 CIS事業部 システムソリューション本部 コアシステム部の成川新吾さまのご紹介です。A&Peopleではプレゼンテーション資料や会社案内の翻訳に加え、海外調査をお手伝いさせていただいています。
若手ながら、冷静かつ積極的に仕事を進めておられる成川さまに、世界でも注目を集める“クルマとITの融合”車の電動化と車載情報機器の進化について、興味深いお話をうかがいました。

                                              [取材者:橘川 真澄]

クルマがエンジンを積んだ鉄の塊からカーナビをはじめとする車載情報機器により、
さまざまな革新の可能性へ

「当社のカーナビの地図は、“差分更新”がウリで、新しくなった時点で必要な部分だけを効率よく入手できます」

日立オートモティブシステムズ株式会社は、1930(昭和5)年の創業時より自動車のパーツメーカーとして、近年はその技術を活かして自動車周りの環境・安全・情報の3分野の技術開発を、具体的にはエンジンや走行の制御システム、ハイブリッド車/電気自動車のエネルギー制御システムなどを重点的に手がけられています。 2005年に車載情報システム関連事業を扱うCIS(Car Information Systems) 事業部が発足し、カーナビや通信モジュールなどの車載情報機器とクラウドサービスをつなぐ車載情報システムの開発を本格化しました。 

成川さまはそのCIS事業部で、車載情報システムの中核をなすカーナビ向けの地図の開発を手がけられています。

 以前のカーナビはクルマから独立した存在でしたが、今ではクルマとカーナビの位置付けが統合されつつあります。CIS(Car Information Systems)は、クルマをネットワーク経由で外界とつなげるシステムで、交通情報や運行管理などのサービスも含まれます。私の仕事は、地図ベンダーから提供される電子地図を基に、カーナビ用地図を開発することです。この技術次第で、地図を利用したサービスの可能性や展開が変わってきます。日立オートモティブシステムズのカーナビの地図は、“差分更新”がウリで、新しくなった時点で必要な部分だけを効率よく入手できるんです。

A&Peopleは2006年に日立オートモティブシステムズ様の会社概要とプレゼン資料の英訳をお手伝いさせていただくことからお付き合いが始まりました。 そのときの「次世代車載情報システムの実現に向けて」というプレゼンテーションを拝見したときに、「カーナビ=地図」という固定概念しかなかった私は常時ネットワークにつながり、車の整備や診断、遠隔エンジン制御、操縦、衝突防止などができるというような内容がSF小説のように思え、驚きを覚えました。また、それが現実するまでにいったい何十年かかるのか、本当にそんなことが現実にできるのかとその時は思いましたが、それからわずか5年で、WiMAXなど高速の通信ネットワークの普及もあって、車載情報システムは自動車業界の、また日本の注目分野になっています。日立さまの技術力の高さに改めて感銘しています 。

 大学・大学院で情報工学を専攻し、クルマが好きということもあって、IT関連か自動車関連の就職を希望していました。でも、自動車メーカーは、関われるクルマが限られてしまう点がしっくりこなくて…。今の会社は、メーカーを限定せずクルマと情報をつなごうとしていて、自分の想いにピッタリでした。カーナビや車載情報システムの発展はこれからが本番で、まったく先が見えません。自分自身がそれに関われることもそうですが、その展開を近くで見守れるのは、何よりの楽しみですね。

地図データがクラウド化されれば、カーナビはハードとソフトが一体化したものではなくなり、国内であろうが外国であろうが現地で必要な地図データを入手して使うようになる。そんな話もそう遠い未来のことではなさそうです。

 

世界に出れば、地図もカーナビも十人十色

成川さまのご担当は、北米・欧州・オーストラリアなど海外地図の全体的な部分。国によっては基になる地図データがなく、情報の少なさや文化的な違いに難しさがあるようです。

地図といっても、国によって見方や使い方が異なります。道路や町が整備されていれば、住所や通りを入力できますが、これからカバーしていく発展途上国ではそれができない場合もあります。でも住所がなくても、正確な地図がなくても、現地の人はその場所を特定して、そこへ行っている。そういうことがわからないと、その地に合ったものが作れません。言語の壁は覚悟していましたが、情報が思った以上に少なくて、文化の壁の厚さを感じさせられました。カーナビのニーズも様々で、ナビをステータスとして搭載していて、実際には使っていないという国もありますね。また国境という概念も日本と異なり、たとえばヨーロッパなら隣国との行き来は当たり前で、国単位という考え方は通用しませんので、この仕事を通じて海外の新たな発見や驚きがあり色々楽しいです。

「カーナビや車載情報システムの展開を近くで見守れるのは、何よりの楽しみです」

A&Peopleでもカーナビの利用状況に関する現地調査をお手伝いさせていただきました。住所の表記(例えば、市・町名・番地というレベルや順序など)が統一されていない、地名や通り名を用いず山や川を目印にするといった事実にも驚きを感じましたが、現地のカーナビ利用者にアンケートにしても相応する回答を得るための“尋ね方”が肝心となることなど、言語の背景にも様々な要素があることを実感いたしました。

カーナビの地図ベンダーは、常に実際に社員が車で走って道を確認しているそうですが、やはり現地へはよく出かけられるのでしょうか?

上司からは“行ってこい!”と言われてるんですが、なかなかそういう機会もなくて…。以前、アメリカに出張したとき実際にフリーウェイを走行してみて、日本との違いはもちろん、自分が見ていた地図との感覚上の違いを実感しました。インターネットでの情報源に限られる地域もありますが、調べられることは全て調べます。

今、手がけられているプロジェクトについてもお聞きしてみました。

一つには、自動車メーカーのニーズに応えて、いわば“お客様のご要望を基本とする”製品があって、こちらは国数を増やしているところです。地図データは一度変換して終わりではなく、フォーマットを変えて別の製品に展開していかなければならないのですが、これから新フォーマットで“自分たちが考えて作る”製品にも取りかかるところです。受注式だと、納品した地図データがいつの間にかナビに搭載されて世に出ていて、使い勝手などのフィードバックもなかなか得られないのですが、新しい製品では現地から直にフィードバックをもらい、改良していくことが可能です。

固定観念は無用、フレキシブルさとコミュニケーションを重視

「コミュニケーションが大切なので、積極的に関係者を巻き込んで仕事をしたり、話をするように心がけています」

成川さまは、すでに入社2年目からプロジェクトを率先して動かされていました。CIS事業部は、働く場としてはどんな所に特徴があるのでしょうか?

大学院では、研究コースではなくて社会人として実用的なシステム開発に携わる特殊なコースを選択したため、顧客がいる状況での開発経験はありました。CIS事業部は2005年に出来たばかりということもあって、新しいものに取り組んでいこうというエネルギーを持った人が集まっています。つい先日まで部長から新入社員までが一つのフロアに混在していまして、部長クラスにも積極的に意見が言えて、自分で仕事を動かしていけます。A&Peopleに調査をお願いしたのは入社2年目でしたが、上司や周囲にも経験がない未知の領域の開拓を自分主導で進めさせてもらえて、大変な部分もありましたが、とても遣り甲斐がありました。やはりコミュニケーションが大切なので、役職に関係なく、関係者を巻き込んで仕事をしたり、話をするように心がけています。

予期せぬ問題が発生しても、常に冷静に対応されるご様子は、ぜひ見習わせていただきたいと思っている点です。何か秘訣はあるのでしょうか。

一つの考えに固定されないよう心がけています。自分と合わない意見や考えでも、反発するのではなく、なぜそうなのかを考えてみるんです。納得できない場合もありますけれど、物の見方や切り口は大切ですから。それを意識していないと、自分の経験や思い込みで判断してしまいがちなので。あとは、周囲の声に聞き耳(笑)を立てることも。上司同士の議論は参考になりますし、聞くだけで糧になりますから。

ロジカルシンキング、なかなか難しそうですが、私もぜひ心がけていこうと思います。

仕事を通じてともに成長を―――A&Peopleへの期待

A&Peopleでは昨年、プエルトリコ、中東、台湾のカーナビ事情の調査をお手伝いさせていただきました。

社内の紹介で、最初から普通は手がけないであろう無謀な調査をお願いしてしまいまして…。親身になって取り組んでいただき、とても好感触を得ました。調査を通じて弊社もいろいろなことを吸収できましたし、今回の作業を通じてA&People側も成長できたのではないかとも感じています。また、新しい案件が出てきても、安心してお願いできるパートナーであっていただければ何よりです。特殊な地域ばかりになると思いますが…

「A&Peopleには親身になって取り組んでいただき、とても好感触を得ました」

調査については、最初の依頼内容とご説明が明確で、大変助かりました。民族性の強い地域も多く、難しい面も多々ありましたが、たいへん勉強になりました。翻訳でも、調査でも、弊社のネットワークをフルに活用して“特殊な”地域にも対応させていただきます。

最後に、成川さまのリフレッシュ法をお聞きしました。

休日には仕事のことは考えず、身体を動かすことですね。学生時代からバレーボールをやっていまして、社会人になってからも月に1、2度茨城まで練習に出向いていました。運転もリフレッシュになるので。

ポジションはレフトで、何と男女混合(男3、女3)や男子の大会での優勝経験もおありだそうです。クルマはマニュアル派で、スポーツカーを飛ばしていたとかいないとか…。実は成川さま、先日ご結婚されたばかりで、エジプトへの新婚旅行では大変な目に遭われたそうです。

ストライキに現地政府のバスが無理矢理突っ込んだおかげで、私たちの乗っていたバスまでとばっちりで投石されてしまい、フロントガラスにはひびが入りました。いい面だけでなく、いろいろな意味で現地のナマの雰囲気を味わってきました。

首都カイロは24時間渋滞していて、カーナビの出番はまだのようですが、成川さまの手がけた地図が登場するのもそう遠い未来のことではないかもしれませんね。

日立オートモティブシステムズ株式会社 http://www.hitachi-automotive.co.jp/