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vol.43 寺澤慎祐さま

株式会社サンクイット 代表取締役

人材育成ではなく人材発見を!

世界最大級の投資家である米国ブラックロック社は、「企業の持続的な成長にはESG投資が不可欠であり、従業員の能力開発や生活水準向上への積極的な投資を重視する」という書簡を日本企業に送っています。企業価値を高めるために企業が優先的に取り組むべき事項、ESG投資に対する課題など人材組織コンサルティングの観点から教えていただきました。

「People」第43回目は、『笑顔で前向きに楽しく働く人を増やしたい』という思いで様々なサービスを提供されていらっしゃる株式会社サンクイット代表取締役の寺澤 慎祐さまにお話を伺いました。

企業価値を高めるために企業が優先的に取り組むべき事項、ESG投資に対する課題など人材組織コンサルティングの観点から教えていただきました。

寺澤慎祐様の略歴と現在のお仕事や活動内容についてご紹介をお願いいたします。

私は、大学卒業後にIT系商社に就職して以来、20年以上IT業界で仕事をしてきて4つの会社に勤めました。エンジニア・営業・マーケティング・ビジネス開発という職種を経験し、従業員は20名から1万人以上、上場前と上場後の会社、日本・英国・米国の会社というように、バランス良いキャリアを積んできました。

会社員生活を終える直前に英国ウェールズ大学のビジネススクールに通い始めMBA(経営学修士)をとることにしたのです。長くIT業界にいましたので「システム投資ってどれくらい企業価値の向上に貢献しているのだろう?」という疑問がありましたので、私の修士論文は「システム投資と企業価値向上の因果関係」のような論文にしました。

そして、先行論文として海外論文を調べてみると衝撃の事実が!

なんと「システム投資はほとんど生産性向上や企業価値向上に貢献していない」ということでした。
この結果は衝撃的でした。20年以上、顧客に対して「ITを活用して業務効率化を図り生産性向上をしましょう!」と言ってきたのに、実はほぼほぼ違っていたからです。

そして、その論文には先がありました。米国で企業価値が高い企業は、IT投資額に対して約9倍の組織的資本に投資しているということだったのです。

IT投資だけしていても無意味で、IT投資を有効化したければ組織的資本投資が必要で、組織的資本投資をしなければI T投資は無駄に終わるということでした。しかも、日本は人材の能力開発にかける投資額は従業員一人当たり年間3万円程度で米国の20分の1以下なのです。

私はITが好きですし、今も必要だとは思っているので、IT投資を無駄にしないためにも、企業に正しい人材組織投資を促すための人材組織コンサルティング会社として2017年に株式会社サンクイットを設立したのです。

サンクイット社では、経営者が現状を正しく把握するために、まずは人材や組織の現状を科学的に正しく評価することをサービスのスタートにしています。そして、現状を正しく理解できれば解決方法はいくつかのアプローチがありますので、最適なタイミングで最適な施策をすることで、経営者が目指したい理想的な状態を実現するまでのプログラムを実施しています。

企業価値を高め投資家やステークホルダーに共感を得るために、企業が優先的に取り組むべき事項はどのようなこととお考えでしょうか。また、その理由も教えてください。

世界最大規模の投資会社であるブラックロック社のラリー・フィンク会長兼CEOは、「長期的な投資対象となる企業は、従業員の能力開発や生活水準の向上に積極的に投資しているか否かによって決まる」と言っています。ヤマ勘で物事を判断しない米国投資企業が、企業が投資すべき箇所はモノ・カネ・情報システムではなく人と組織であることを明確にしたわけです。

ハーバード大の研究でも、現代は個性の時代と言われ、これまでの標準化の時代は終わったと言っています。これは人材にも当てはまっていて、現在は、新入社員や中堅層、管理職などに対して階層別研修をしていて、社員がどんな個性や特性を持っていようがお構いなし階層別研修をしているのが実情です。つまり、人材を育成するという感覚です。

私は、個性の時代においてこの「人材を育成する」という感覚に違和感を持っています。

例えが変かもしれませんが、個々人の特性・個性とはスプーンやフォークやナイフみたいなもので、スプーンを育成することでナイフのように切ることはできるかもしれませんが、それはスプーンの特性を生かしているわけではないのです。長くスプーンにナイフの役割を与え続けることはストレスにもなり、そもそも得意なことではないので仕事のパフォーマンスも向上しません。

そうではなくて、各個人の個性特性がスプーンなのかフォークなのかナイフなのかを明確にし、それぞれの個性特性を活かせる職種(ジョブ)に就いてもらうことがベストだと思うのです。
なので、私は、人材育成ではなく人材発見だと思うわけです。

DXの推進に相応しい人材、営業に相応しい人材、経理に相応しい人材、マーケティングに相応しい人材を発見して、その職種に当てはめることが本当の適材適所で、個々人の仕事のパフォーマンスを向上させます。

当社は、社員個人の行動特性を科学的に評価し可視化することで、個人を活かせる職種につけたり、現職種で個性を最大化できるようにしたコンサルティングをしています。私個人は、徐々に、人材育成ではなく、人材発見に移すべきだと思っています。

上記の中でESG投資に対する日本企業の取組みの現在の課題と思われる点をご教示ください。

ESG投資が必要である背景には企業経営の持続性があります。そして、持続性が高い企業経営をするにおいて注目されているのがコーポレートガバナンス・コードです。コーポレートガバナンス・コードとは、2015年に策定された上場企業による企業統治の原則・指針を示したものですが、2021年の改訂では、「経営者等の後継者計画の策定・運用に主体的に関与し、後継者候補の選抜育成を計画的に行う必要がある」としています。

しかし、どれほどの企業が後継者候補の選抜を計画的に行っているでしょうか? 次の経営者を選ぶのに、単なるパワーゲーム、派閥争い、可愛い部下、従順な部下で選んでいないでしょうか? もし、このような方法でしか後継者の選抜をしていないのであれば企業の持続性の危機です。

現経営者達が卓越した優秀な経営者であることが前提とはなりますが、私は、現経営者達の行動特性を評価し定量的に可視化することで行動特性モデルを開発し、そのモデルに合致した後継者候補を選抜して育成することが、これからの現代企業の持続性の鍵となると思っています。

ESG経営が求められるなかでPlain Language(透明性のある明確かつ公正な対話)の重要性についてご意見をお聞かせください。具体例などあればご提示いただけますと幸いです。

持続性が高い企業経営をするには、挑戦する組織文化や変革を厭わない組織文化が必要ですが、組織文化は社員が創り出すものです。どのように組織文化が創り出されるかというと、それはコミュニケーションです。

人と人が対話をすることで新しい未来を創り出すのです。対話は話すこと聴くことがメインですが、私は、プレイン・ランゲージは効率的に理解しやすく書くことで、コミュニケーションが深まるのだと思っています。組織が壊れる時はコミュニケーションギャップが発生した時ですし、組織が再生する時はコミュニケーションギャップが無くなる時です。私の人材組織コンサルティングの第一歩として心がけているのはコミュニケーションギャップを無くすことです。

話せばわかることを話さないので関係性が壊れるのです。
書いた文章の本意が伝わらないので関係性が壊れるのです。

昨今は、コロナ禍で発生したワークスタイルの変化によって、話すコミュニケーションに加えて、チャットやメールのように書くコミュニケーションが多くなっているため、良質なコミュニケーションをして、より良い人間関係を作り、より良い組織文化を創るためにプレイン・ランゲージはとても重要な考え方だと考えます。

最後に

当社は経営者やリーダ向けにエグゼクティブコーチングをしています。 経営者の意思決定は意外と孤独です。全責任を負う意思決定が正しいのか否かは結果を見るまでわかりませんが、今ここで意思決定しないと未来は変わりません。自信を持った意思決定をするためにも、会社や自分のビジョンやミッション、方向性を明確にすることが非常に大切です。会社や自分のビジョンやミッション、方向性を明確にしたい方は、体験コーチングがお勧めします。
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