ビジネス界で活躍されている素敵なPeopleをご紹介しています。
A&Peopleは、そうした素敵な方々と業務を通じて、助力となるべく連携させていただけることを誇りに思っています。

vol.20 坂本 史郎さま

e-Janネットワークス株式会社 代表取締役

企業制度を利用してMBA留学&起業 数年は赤字が続き、徹底的なヒアリングで仕切り直し

話題のITサービスで急成長を遂げているe-Janネットワークス株式会社の設立や主要製品について、また坂本さまの組織哲学についてうかがいました。

「People」VOL.20は、ビジネスモバイルサービスを手がけられているe-Janネットワークス株式会社 代表取締役の坂本史郎さまのご紹介です。A&Peopleでは、主要製品「CACHATTO」の製品概要パンフレットや外国語版製品管理マニュアル、リクルート向け会社案内の翻訳や制作をお手伝いさせていただいています。

話題のITサービスで急成長を遂げているe-Janネットワークス株式会社の設立や主要製品について、また坂本さまの組織哲学についてうかがいました。

                                            [取材者:三島 のどか]

企業制度を利用してMBA留学&起業
数年は赤字が続き、徹底的なヒアリングで仕切り直し

e-Janネットワークスを起業された経緯は?

大学卒業後は新素材の開発を志して東レ株式会社に入社し、米国企業との合弁会社に配属され、営業寄りの開発職に従事していました。来日する欧米の技術者の通訳を通じて多少英語力が身に付いた頃、東レに留学制度ができて第一期生としてMBA留学に派遣してもらい、はじめてビジネスを作り上げるすごさと面白さを知り、いつかはと思うようになりました。
帰国後、配属された工場の業績改善に取り組み、無事成果を上げた頃に今度は東レのベンチャー支援制度ができ、その第一号として起業しました。社内ベンチャーではなく、やるからには背水の陣でということで、退職して自らも最低500万円の資金を用意するという少々珍しい制度でした。その後この制度はなくなり、結局その仕組みで起業したのは後にも先にも私一人となりました。
社名は読んだ通り「(膝をポンと叩いて)それ、e-Jan」と言ってもらえればと当初は軽いノリで付けたものです。今は、“「これ、e-Jan」と言い続けてもらえるサービスを提供する企業”であることを目標としています。

起業直後はいろいろご苦労されたそうですね。

2000年時点にかなり先行して“クラウド(cloud)”のメールサービスを開発したのですが、その用途や意義が一般に理解されず、また開発にあるだけ資金を注ぎ込んでしまいました。成果が出ず、資金もなくなり、追い込まれてようやく、“自分たちが何を作りたいのか”ではなく、“お客様は何にならお金を出して使ってくれるのか”と考えるようになれました。それまで付き合いのあった会社や、東レの関連会社に電話をかけまくってアポイントメントを取り、半年で約200社にヒアリングをしました。システム担当者に提案をし、その意見をもとに企画を練り直すということを続けていくうちに、今の「CACHATTO(カチャット)」の原型が見えてきました。その後、ネットワーク環境や端末の進化も手伝って、実績が実績を呼ぶという形で売上が伸び始め、現在は650社、20数万人に利用いただくまでになりました。

「CACHATTO」は、安全にすきま時間を活用するためのインフラ
今後は海外サポートも展開

御社の主要製品である「CACHATTO」とはどんなサービスでしょうか?

大企業ではセキュリティ上社外からメールが読めないことが多く、個人が例えばGmailを利用して自分のスマートフォンなどの端末に会社のメールを転送する“シャドーIT”が問題化しています。これはデータ漏洩や不正アクセスにつながる危険な状態で、それを回避するには会社や役所側で、インフラを用意する必要があります。
「CACHATTO」はそのための法人向けのリモートアクセスシステムサービスです。個人の端末からメールの送受信ができ、端末にデータは残さないというものです。特徴は操作の簡易さ、セキュリティの高さ、導入のしやすさにあります。最近は機能が増えて、メールの送受信以外にも、スケジュール管理、社内イントラネットの利用、ファイルサーバーへのアクセスなども行えます。機能はお客様の要望に応じて随時追加で強化しており、今月登場した「CACHATTO Desktop」はMicrosoft Officeのデータファイルの編集にも対応しています。もちろん、端末にデータは残りません。
会社には数十秒あれば済むという仕事が意外とあるものです。社内ではなかなかその時間がとれないけれど、移動中にはけっこう時間がある。「CACHATTO」があればそういう時間を有効に使えるようになる、というわけです。

今後の展開についてお話しいただけますか?

以前から海外で利用したいというご要望が多く、去年から海外サポートにも着手しています。今年に入り、シンガポールに現地法人を設立し、海外専用の日本語/英語・24時間365日対応のグローバルヘルプデスクも立ち上げております。また社内でも、外国人の採用や、一対一の社内英会話教室(外国人講師を複数名常駐させ、勤務中に時間を作って参加)など、グローバルコミュニケーション力の強化を進めています。

“愛情”で社員一人ひとりのモチベーションを高める
組織がまとまっていれば、ビジネスは自然と動いていく

経営は “持久戦”だと言われますが、それには内側の充実が大切。会社がまとまっていれば、輝き続けられます。私が理想とするのは、一人ひとりの力が認められ、全力で仕事に取り組める組織です。業績が上がって、会社が大きくなりつつある今こそ、この“理想組織”を続けることが大事だと思っています。
一人ひとりのモチベーションを高めるのに必要なのは、“愛情”。これはお金と同じで、不足するとギスギスして、最悪の場合は人のものを奪おうとする。その一方で十分に与えられていると、人にも与えられると思います。組織で愛情を満たすには、「ありがとう」という言葉、そして相手に「してもらったこと」「して返したこと」「迷惑をかけたこと」を思い起こし、具体的に示すことが有効です。これはいいエネルギーにつながるものです。一方、なかなか忘れられない「してくれなかったこと」「迷惑をかけられたこと」はマイナスエネルギーにしかならないので意識して忘れるようにします。
我が社では、いくつかのツールでこれを実践しています。まず、毎日全社員に書いてもらう「日報」。これには今日/明日の業務など通常の項目に加えて、上記の観点からのグッドニュースや感謝を書いてもらいます。翌朝、私がこの全員の日報をひとまとめにして、一言二言ずつコメントを添えたうえで、連絡事項やエッセーを添えて「朝メール」としてメーリングリストで全員に送信しています。この「朝メール」は2004年から10年以上続けています。また、日報には書きにくいことを直接聞く機会として、月に1回全社員との「10分間面接」も行っています。
社員の人数が増えてくるとまた別の工夫が必要になりますが、この理想組織の維持こそが経営の要であることを、生涯かけて証明していきたいと思っています。

期間やクオリティが優先されるものを依頼
A&Peopleの位置付け

実は昨年から翻訳や制作にはクラウドソーシング(crowdsourcing)での発注も行っています。インターネットで案件ごとに翻訳者やプロジェクトマネージャの募集をかけ、適任者に発注するというものです。コスト面の理由もありますが、技術がらみのものなど専門知識を要するものは、翻訳会社の範疇を超えることも少なくないので。
でも、先日お願いしたパンフレットのように、とくに短期間でしっかりとした成果物が必要なとき、イベントや大物の案件は、やはりA&Peopleさんにお願いすることになります。社内にしても、アウトソーシングにしても、お金は出すから大急ぎでというわけにはいかないので。短期間で高いクオリティで仕上げていただけるので、大変助かっています。

e-Janネットワークス株式会社  http://www.e-jan.co.jp/