アメリカは不況に向かっている?! 不況時にIROが気を付けるべきこと

2019年7月、米国の歴史でもっとも長い経済成長が記録されました。
失業率は過去50年で最低となっています。
とはいえ、上がったものは下がるのが自然の摂理。

不況の到来を予測する専門家も存在します。
過去94年の歴史を紐解いてみても、S&P 500社の株価が
上昇しているのは、市場が開いている総日数の52%に留まっています。

IROは不況に備える必要はありますが、恐れる必要はありません。
また、不況も悪いことばかりではありません。
株価が下がれば、投資家にとって株購入のハードルが下がります。
また中央銀行は金利を下げるため、ローンの金利も下がります。
配当金は上がり、債券の価格は増加します。

6月にフェニックスで開催されたNIRIの年次カンファレンスでは、
不況時にIROがどのように活動していけばよいかが議論されました。

▼ 失った信用は取り戻せない
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
不況の際に一番避けるべきことは、情報発信を止めてしまうことです。
難しい状況でもメッセージが伝わるように最善を尽くしましょう。

カンファレンスを開催するセルサイドが減った場合、
ノンディール・ロードショーを実施し、バイサイドの投資家に
直接リーチします。この際には、マーケットには必ずアップダウンが
あることを理解して投資する長期投資家を対象とします。

IRの焦点は長期的な企業価値であることを忘れないことが大切です。
一度失った信用を取り戻すのは至難の業となりますので、
信用を失わないように、情報を開示していきます。

▼ 業界限定の不況
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
自分たちがビジネスを行っている業界のみ景気が悪化している場合は、
どうしたらよいのでしょうか? これは、市場全体の不況の際よりも
IROにとっては扱いが難しくなります。

業界または企業の景気が悪化している場合、同業他社との違いを
理解してもらうことが大切になります。そのため、ライバル企業が
発信している情報にも目を通すようにします。

また経営陣は、企業の状況を隠すのではなく、引き続き透明性を
維持するように努めます。一貫したストーリーを提示することで、
株価が落ちるまで購入のタイミングを見計らっている投資家を
味方に付けることができます。

▼ 信用を維持する
¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨
IROの最大の財産である信用を維持するためには、経営陣、従業員、
投資家の間で情報がしっかりと共有されるようにする必要があります。
そのためには、次のようなアクションが役立ちます。

・経営陣と従業員を集めた対話

・投資家向けのプレゼンテーションや業績予測を聞くチャンスを
従業員に与える

・同業他社や業界のデータを使って、従業員と経営陣に対して、
自社の状況だけが厳しいのではないことを伝える

・株式の売買が頻繁に行われるようになるため、資金フローに関する
データや空売りに関するレポートの重要性が上がることを理解する

・どのように状況を乗り越えるのか、経営陣から重要な株主に対して
アップデートを行う

∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
◆ 参考・出典一覧
IR Update 2019年夏号
『Are We Headed to the Big R?』