「日英同時開示をスムーズにするためのプレインランゲージ」セミナー
【セミナー参加レポート】

2025年11月17日に日本IR協議会様のタイアップセミナーに講師として参加させていただきました。本記事ではセミナーの概要の一部をご紹介します。

主なプログラム:

・海外投資家が求める情報開示のスタイル
・日本語が翻訳しにくくなるワケ
・わかりにくい日本語を直す
・プレインジャパニーズ9つの原則とは?
・プレインジャパニーズをプレインイングリッシュに訳す  など

海外投資家が求める情報開示のスタイルとは?

日本の企業へ投資したいと考えている投資家は世界に数多くいます。
ただし、投資に至らない場合、その理由として挙げられるものの一つに「日本のIR資料の日本語がわかりにくい」というポイントがあります。
海外の投資家なのになぜ日本語?と思われるかもしれません。
日本企業に多く見られる曖昧で明確性を避けた表現や、冗長で長い文章は
AI翻訳の精度を下げ、海外投資家の情報収集の妨げとなる可能性があるためです。
AIが急速に発展している今、プレインランゲージは全世界で注目されています。

日本語をわかりやすく書くポイント

読み手が、必要な情報を簡単に見つけて誤解なく読むことができるようにすべく、
まず情報を整理し、論理的な文章構成を組み⽴てる必要があります。
そのヒントとなるのがプレインランゲージの原則です。

【プレインジャパニーズ9つの原則】
①読み⼿を明確にする
②結論を⽂頭におく
③読みやすいデザインにする
④⽂を短くする
⑤⽇常的な単語や表現を使う
⑥簡潔な表現を使う
⑦能動態を使う
⑧肯定表現を使う
⑨主語と述語を近づける

9のガイドラインと分析 – JAPL 一般社団法人 日本プレインランゲージ協会(Japan Association of Plain Language)

まとめ

翻訳を円滑に進める第一歩は、日本語原文を明確で簡潔に書き、誤解を招かないことです。これは国際標準であり、米国SECが求める「プレインイングリッシュ」への近道でもあります。論理的でわかりやすい⽂章法に慣れている海外の投資家の⽅に向けた英⽂を提供するため、まずは「簡潔で明瞭な日本語(プレインジャパニーズ)の作成」が重要です。

プレインジャパニーズで作成した文章は機械翻訳やAI翻訳とも相性がよく、多言語翻訳も効果的に行うことができます。

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より多くの読み手にメッセージを届ける
プレインランゲージとインクルーシブランゲージ

近年耳にすることが多いプレインランゲージとインクルーシブランゲージ。このふたつは、実は切っても切れない関係にあります。

多くの人が簡単に理解できる、プレインイングリッシュ

読者が簡単に要点を理解できるプレインイングリッシュ*は、読み書きが苦手な人でも比較的理解しやすい英語です。また、要点が理解しやすいということは、翻訳しやすい英語であり、正確に翻訳されることで英語が母国語ではない人も情報にアクセスできる可能性が高まります。そのため、移民が多い英語圏の国では、プレインイングリッシュは多様性に考慮した言葉として扱われています。

*プレインイングリッシュとは、英語のプレインランゲージです。

さまざまなバックグランドを持つ人に敬意を示す、インクルーシブランゲージ

インクルーシブランゲージは、多様なバックグランドをもつ人たちに敬意を払う表現です。ジェンダーだけではなく、文化、人種、年齢、障害などの多様性に敬意を示しています。

MissとMrs.が旧時代的なのはわかる、でもMx.とは?

インクルーシブランゲージでは、社会の新しい「あたりまえ」が言葉に反映されます。

ひと昔前は、未婚の女性はMiss、既婚の女性はMrs.と表現され、女性のみが既婚か未婚かを表記する必要がありました。現在では、既婚か未婚かを問わず女性であることを意味するMs.が一般的になり、広く浸透しています。

新しく浸透しつつある表現がMx.(ミックス)です。これは、男か女を表現したくない人や、男とも女とも自認しないジェンダーニュートラルな人がMr.やMs.の代わりに選ぶことができる表現です。オーストラリアやイギリスでは政府も認めている表現となります。

姓と名のどちらがファーストネームかは文化によって違う

英語でよく耳にするfirst name(ファーストネーム:名)や last name (ラストネーム:姓)ですが、オーストラリア政府では政府関連の文書でこの表現を段階的に排除しています。

世界中の多くの文化で、姓と名の両方が使われています。しかし、姓と名のどちらを最初に名乗るかは文化によって異なります。そこで、ファースト(最初)やラスト(最後)といった順番を表す言葉の代わりにgiven name(与えられた名) と family name(家の名)が使われています。

自分事であると感じてもらえるメッセージを生み出す

今回はほんのわずかな例しか紹介できませんでしたが、インクルーシブランゲージを使うことの利点の一つに、メッセージが「自分に向けられている」と読者が感じることにあります。

プレインイングリッシュとインクルーシブランゲージを使うことで、より多くの読み手に「自分事」としてメッセージを届けることができるようになります。

https://www.stylemanual.gov.au/accessible-and-inclusive-content/inclusive-language
https://www.digital.nsw.gov.au/delivery/digital-service-toolkit/resources/writing-content/content-101/writing-for-inclusivity

よりわかりやすい世界共通語、プレインイングリッシュ
豪観光セクターでも注目

プレインイングリッシュ先進国であるオーストラリアでは、ビジネスにとどまらず、行政、病院、ツーリズムなど、あらゆる場面でプレインイングリッシュが活用されています。誰しもが情報を簡単に理解できるプレインイングリッシュは、国内外の観光需要を見込むセクターでも注目されています。
今回はオーストラリアの地方行政が観光需要を見込むビジネスに向けたプレインランゲージの基本についての記事を紹介します。プレインイングリッシュの基本を振り返っていきましょう。
日本国内でも観光需要を狙ったビジネスがプレインイングリッシュやプレンジャパニーズを使っているかどうか、ウェブサイトやソーシャルメディアをチェックしてみると面白いかもしれません。

プレインイングリッシュで大切な言葉の使い方7選

  • 不要な単語は使わない
  • シンプルな単語やフレーズを使う
  • YouやMeなどを使い、親近感が感じられる形式をとる
  • 能動態を使う
  • 技術的な専門用語を使わない
  • 略語を使う場合には、最初に略語ではない言葉を書き、その直後にカッコで略語を記載する。例:World Health Organization (WHO)
  • 難しい単語を使う必要がある場合は、読者がわかるように説明する

プレインイングリッシュの文体は、対面での会話を意識

  • 常に読者を心にとめ、フレンドリーな文体を使う
  • 対面で話す際と同じ言葉を使う

プレインイングリッシュの構成で重要な7選

  • 一番重要なポイントを最初に書く
  • 事実を述べる
  • 重要なポイントだけ掲載する
  • 順を追って情報を記載する
  • 短い文を使い、カンマなどをなるべく使わない
  • 一文は20単語以下に抑える
  • 一文に盛り込むのは一つのアイデアとする

完成した文書の見直しもプレインイングリッシュの要

文書を見直す際は、次の7点に注意します。

  • 文書の目的が明確にわかるか
  • 内容になじみのない読者でも理解できるか
  • 対面での会話でも同じ言葉を使うか
  • 削除できる不要な単語はないか
  • 短い文に分けることができる文や、短くできる文はあるか
  • 簡単な単語に置き換えることができる難しい単語はあるか
  • 情報の並び順は、わかりやすい並び順か

・Plain Language Association International (PLAIN)
https://plainlanguagenetwork.org/plain-language/plain-language-around-the-world/
・Tourism Greater Geelong & The Bellarine
https://tourismgeelongbellarine.com.au/topics/toolkits/tips-for-writing-in-plain-english/
・NSW Government website
https://www.digital.nsw.gov.au/delivery/accessibility-and-inclusivity-toolkit/communication/plain-and-inclusive-language

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